∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

『バットマン:ホワイトナイト』 #1 感想

今は亡きヴィレッジブックスアメコミ出版局から出ていた『バットマンホワイトナイト

シリーズの最新作『バットマン:ビヨンド・ザ・ホワイトナイト』の発売を前に『バットマンホワイトナイト』の感想を書いていなかったなと思ったので書くことにしました。シリーズの続きを出すことにしてくれた小学館集英社プロダクションさんありがとう!


クリストファー・ノーラン監督の映画バットマンシリーズ第二弾のタイトルの『ダークナイト

でも使われていたように「ダークナイト」は闇夜に舞うコウモリの騎士ーーバットマンの別名です。さてこのタイトルの「ホワイトナイト」とは誰か?

冒頭、獄につながれたバットマンに面会する「ネイピア」と呼ばれる人物。バットマンに詳しい人なら(ジャック・)ネイピア=ジョーカーと分かりますが、補足で「ジョーカー」と呼ばれている。

そこから話は1年前に遡り、激情的になってジョーカーを追い詰めていくバットマン(ブルース・ウェイン)と彼を心配しながらも追いかけるナイトウィング(ディック・グレイソン)とバットガール(バーバラ・ゴードン)。バットマンにとらえられたジョーカーは冷静に、かつ自分たちの戦いを痴話喧嘩に例えながらバットマンを口撃する。やがて、

バットマンがいるから犯罪者がそれに引き寄せられて街が平和にならない」

という理論を繰り広げ

「俺がマトモになったらお前よりももっとうまくやれる」

と薬を取り出して挑発するジョーカー。バットマンはジョーカーの挑発に乗り、成分不明の薬をジョーカーに無理矢理飲ませる。

バットマンの行動は市でも警察でも問題になり、ウェイン・マナーでブルースの激高の理由を問うディックとバーバラ。二人には知らせていなかったが、実はアルフレッドが重体になっており、Mr.フリーズの技術でかろうじて延命している状態だということを明かす。幼いころに両親を亡くしたブルースにとって、アルフレッドが両親に変わる存在で、彼の不在が精神の不安定をもたらしたのだろう。

一方、監獄で「マトモ」になったジョーカーは「ジャック・ネイピア」を名乗り、バットマンに宣言した通り、バットマンや市警の対応について調べ始め、取り調べの場で

「この私が君たちやダークナイトより優秀な守り手......ホワイトナイトになろう

と宣言し、タイトルを回収したところで1話は終わり。


作品の立ち位置としてはDCブラックレーベルというアダルト向け作品群で、それぞれ独立した世界観で話が進みます。この『バットマンホワイトナイト』も次第に明かされていますが、メインストリームのバットマンの話の設定を参照しつつもズレがあります(#1でもアルフレッドが重症でしたが)。

とにかくまずはアーティストのショーン・マーフィーのアートが素晴らしい。ディフォルメがありつつも鋭角な戦と下書きの勢いを感じる線。影の付け方などなど。

話の方も冒頭のバットマンとジョーカーのやりとりで概ねバットマンとジョーカーの関係性も分かりやすく表現されてますし*1ヴィランが改心(?)してヒーローになった場合、元のヒーローよりうまくやってみせるという意気込みで始まる話は『スーペリアー・スパイダーマン』でもありました。そこにバットマンの問題点として指摘される、「犯罪行為の撲滅を目指す」という目的は正しいかもしれないが、手段は犯罪者と変わらないところもある点を突き、善悪逆転要素もあります。しかも世界や価値観が変わるわけではないところがよい。

次回からはジャック・ネイピアによるバットマンや市警の糾弾がはじまり、ゴッサムに変革をもたらしていくことになります。


「メインストリームのバットマンの話ではない」という前置きの元で、現時点でバットマンのまとまった邦訳の話を選ぶなら間違いなく三本の指に入る作品だと思います。

*1:極論ではあるが、ジョーカー曰く「バッツ、オレ達はチームさ。足りてないのは仲直りのセックスだけ」というのはある意味その通りかもしれない