∀ddict

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漫画『昭和天皇物語』15巻

明治維新ないしは日清・日露戦争から太平洋戦争終結までの話が諸所の都合であまり知らないので、読み始めて15巻目。


本巻で語られる昭和16年の対米戦決定までの人々のやりとりは現代日本人にも通ずるものがあるのか、それとも後年の人間が同時代資料資料を参照しているとはいえ、心の内を慮っている故か。

ここに至って何度も繰り返される名目と実態の乖離、いや、最高権威を貶める事のないための仕組みと言ったほうがよさそうな話。

この巻で亡くなった西園寺公望が端的に言っていた。最高権威は間違う事があってはならないため、常に自分の意見を公にせず、上奏を追認するのみ。しからば、成功しても失敗しても臣民の責任である、と。「公」にしてはいけないのでさまざまな婉曲的な伝達が行われる。

  • 一対一の場だけで伝える(相手が握り潰す事がある)
  • 元老のような代弁者的立場が伝える(西園寺公望が最後の元老で亡くなったので不在)
  • 内大臣や侍従など、身辺にいる人が所感として伝える(5.15のような襲撃事件が起こる)
  • 和歌を読む(雅だけど効果は……)

全く同じではないとはいえ、現代日本にもありそうな光景が浮かぶ。

陸軍の北進(ドイツと共に対ソ戦)と海軍の南進(東南アジアに進出)で割れたまま、首相は近衛文麿東條英機と入れ替わって真珠湾攻撃へ。


タイトル通り昭和天皇の近辺の話が中心なので、交渉失敗に至った経緯や交渉の内容は同著者の他の編著本を読んでみようかと思いました。