機動戦士ガンダムSEED DESTINY第4話感想 1クール(4/13)
○感想
面白いと言えば面白いんだけど、相変わらず主人公たち以外がどう動いているかが良く分からないし、アスランやシンのキャラ立ちがイマイチなまま*1イザークとディアッカと合流(?)この二人は前作からキャラが変わってなければポジションもそんなに変わってないのでキャラ立ちしてるわけでシンがますます埋没していく気がします。*2
結局いろいろな所で『SEED』の時代から言われてることだけど、「キャラ萌え」+「ネタ元」なんでしょうね。確かにレイなんてお姉様と一部のお兄様方に受けそうだし、ルナマリア姉妹とステラはお兄様方に人気ですしね。
○シャア本領発揮
・デュランダル
腹黒い、腹黒いよシャア(デュランダルです)。前回ED前からアスランを手玉に取ってます。ミネルバが窮地に陥った時にはアスランがどう出るかを観察してニヤニヤしてるし、いよいよまずいときには
「この艦にはもう、モビルスーツはないのか!?」(デュランダル)
「パイロットがいません!」(タリア)
とか言い出すし。普通の会話なんでしょうが、事前にニヤニヤされてると単なる意地悪な奴に見えますが。
・アスラン(アレックス)
そしてアスランの回想シーン。何故この人の回想にフレイとフラガが出てくるのかは不明。*3後、前作で幾度と無く使いまわされたニコルの死亡シーンは今作でも使われる模様。ルナマリアとの会話で
「まさかというか、やっぱりというか、伝説のエースにこんな所でお会いできるなんて、光栄です」(ルナマリア)
「そんな者じゃない、オレはアレックスだよ」(アスラン)
という行はどうもΖ(第13話『シャトル発進』)の
「今の私はクワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でも、それ以下でもない」(クワトロ)
に比べると、どうにも弱いですね。おまけにうろたえ方が激しい(笑)この方がシャアの役割をどうして果たせないのか(あるいはどうして『SEED』放映時にアスラン=シャアという構図*4が出来なかったのか)と言うと、アスランはあまりにへたれなんですよ。大任を果たして本国に帰ってみれば婚約者は反体制のレジスタンスの頭になってて、いきなり
「ザフトのアスラン・ザラ」(ラクス)
などと他人行儀になっていたのに驚くのは良しにしても、その後の『W』のリリーナを彷彿とさせるようなセリフに一言も反論できない。いち志願兵ならそれも構いませんが、彼は士官学校主席卒で最高評議会議長の息子です。
福田監督談「僕の中では、シャアに当たるキャラクターはアスランだと思っていたからです」*5ですが、どうにも自分のような比較議論がとかくアンチに走りがちな理由は
- あまりに類似している設定やシチュエーションの多用
- 更に、それがパロディーとして面白いわけではなくて、オリジナルのほうがいい(と批評者には思われている)
な、わけで、『語ろう!シャア』を読んだことが無くても、『Ζ』と『SEED』を見ていた人間からすれば、前作の敵の主要人物が偽名+同タイプのサングラスがあれば「クワトロ?」となるわけです。まあ、福田監督からすれば「いい年こいた人間がアニメでカリカリするのはみっともないよ」なわけで、ごもっともなんですけどね(笑)
ともかく、次回出撃するみたいですし、そこで見せ場がないと初めから『Ζ』で言うところの墜落の一途をたどるシャアになりますね。OPが本当なら*6シンの敵はキラなわけですし。
・レイ
個人的にシンとレイの関係はますます『蒼穹のファフナー』の一騎と総志の関係に見えてます。
○21世紀のクワトロとカミーユ
「アスラン・ザラ……」(シン 3話)
と名前を呼ぶまでに留まったシンでしたが、今回Bパートではっきり
「よせよルナ。オーブなんかにいるやつに、何も分かってないんだから」(シン)
と明言しました。アスランが苦々しい顔をしているのがこの後の展開にきっちりつながってくれるといいんですね。
こういうのは見方によっては「エヴァで散々やってきたことを何を今更……」なんだろうなぁ。次回予告と各所のネタバレ情報によると次回で前作ZAFT赤組の生き残りがメインになりそうなので、(おそらくつかの間ではあるだろうけど)次世代との実力差がはっきりと出てくると面白いと思います。
しかしながら次世代ZAFT赤組にはアスランの評価が悪いですね。確かに前作で放映以前は「ダブル主人公」が強調されていたのですが、フタをあけてみればキラ最強伝説とアスランへたれ伝説*9でしたし(笑)『Ζ』(第五話『父と子と…』)での
「君は、シャア・アズナブルという人のことを知っているかな?」(クワトロ)
「尊敬してますよ。あの人は両親の苦労を一身に背負って、ザビ家を倒そうとした人ですから。でも組織に1人で対抗しようとして敗れた、バカな人です」(カミーユ)
というやり取りは21世紀のクワトロとカミーユの間では聞くことが出来ないのでしょうか。アスランを「伝説のエース」と言うルナマリアの言い草も皮肉っぽいしな。
○余談
『SEED』がある層に非常に不評なのは『SEED』が基本的に15歳前後の主人公の言っている正論を大人が諌めるものの、間違っていても修正(笑)*10はしない。それどころかある程度認めてしまう。それで増長したガキがますます好き勝手言い始めて、最終的に主人公の正論に大人が納得させられて結局主人公に合わせて動かざるを得ないという展開だからでしょう。
で、またその正論が結構無茶苦茶で「鶏か?卵か?」*11よりも無理難題をふっかけといて「ほら、答えられないでしょ」という意地悪さを内包している。ガキがそういうことを言うのはいつの時代でも変わらないわけで、富野ガンダムの中でもそういう人間がいくらでもいるのだけれどほぼ例外なく理不尽な修正(笑)を受ける。
アムロしかり、カミーユしかり、ジュドー以降は大人の方が我慢していたりする。*12『ΖΖ』ではブライトが「オレを殴って気が済むなら殴れ」と言っていたり、『Ζ』でカミーユを修正していたウォンもジュドーに殴られまくってましたし。おまけに
「大人はいきなり人を殴ってもいいのか!?」(ジュドー)
と言われる始末。(『ファースト』や『Ζ』のファンは「いいんだ!」と言いたかったかもしれないけどね)その辺も影響してか『ΖΖ』は一部で恐ろしく不評です。*13
で、まあ、これと時代がずいぶん遅れて符合してくるのが今期の金八先生です。
ガキの言う正論に昔は「この、バカチンが!」と言って修正も出来たのですが、今は子供の正論に言いくるめられてブチ切れて自分から「教室から出て行け!」と言っておいてほとんどの生徒がぞろぞろ出て行くと「お前はいかないよな」と泣きすがる状態。今週は切れて「てめえの始末くらいてめえでしろ!」と言い放って教室から出て行って、「やりすぎたかなぁ」と教室に帰ってみれば教室は空っぽ。教壇の前にひざから崩れ落ちる金八の姿がなんとも哀愁を誘います。
少なからず『SEED』を見ていると金八先生の心理に近いものを感じてしまいます。金八先生が
「いいですか、君たちの先輩の3-Bはなぁ……」
「先輩とは関係ないじゃん。よしてよ、比較するのは。俺たちは俺たちなんだし」
と言われてるのと同じように一部のガンダムオタクたちは
「いいか、ガンダムってのはなぁ……」
「種は種でしょ。よしてよ、文句言うのはみっともないし、商業的には成功してるんだし」
と言われて苦渋を味わっているのかもしれません(笑)
実際、劇中でアスランも次世代から同じ扱いを受けていたりするわけで『SEED』と『SEED DESTINY』における最大の被害者はこの人*14なんじゃないかと思う次第ですが(笑)
世代交代がテーマに入っているとしたら単純な構図で語る場合は上の世代が悪いように描かれるのでしょうが、アスランを見ている限りそうでもない様子。
これからどうなるかが楽しみではあります。
*1:シンはEDに入る前の携帯電話とかあったけど、アスランは相変わらず何考えてるのか良く分からない
*2:敵が違うのもあるけど、今のところシンよりレイが優秀なように見えるので、ガンダムパイロットという特性もあやうい。追記:きっちり遺伝子レベルで主人公補正かかってました。>シン
*3:フラガはともかくフレイは知らんはずだが
*4:福田監督は『語ろう!シャア』というムック本でそのつもりで作っていると語っていた。
*5:『語ろう!シャア』p208より
*6:福田発言によると今作ではダミーを混ぜているらしいが、それはOPの意味を損なっている気が……。
*7:要するに延々決着付かないってことかな
*8:こういう大人の事情で語っていいのかかなり疑問だけど
*9:嫌いではありませんけど
*10:「殴られずに一人前になった奴が何処にいる!」(ブライト)や「どうしてごめんなさいの一言が言えんのだ!」(ウォン)、「そんな大人修正してやる!」(カミーユ)などなど
*11:よくキリがなかったり答えが無かったりすることのたとえとして引き合いに出されるけど、量子論的には一応回答があって「宇宙が始まったときの原子の状態が鶏と卵のどちらを産み出す確率が高いかで決まる」だったはず。
*12:『ΖΖ』は大人は忘れてしまった子供の世界がテーマでもあるので仕方ないのだけれど
*13:前半の「明るいガンダム」のコメディータッチは賛否両論分かれるところ
*14:少なくとも『SEED』ではサイと同じく婚約者を寝取られた上に、最後にくっついたのは婚約者を寝取った相手の双子の弟だったという事実はいかんともしがたい