∀ddict

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漫画『銀河帝国興亡史』1巻, 2巻

銀河帝国興亡史1 ファウンデーション (CLASSICS OF SCIENCE FICTION)

銀河帝国興亡史1 ファウンデーション (CLASSICS OF SCIENCE FICTION)

銀河帝国興亡史2 ファウンデーション (CLASSICS OF SCIENCE FICTION)

銀河帝国興亡史2 ファウンデーション (CLASSICS OF SCIENCE FICTION)


思えば近隣に休憩時間にはハヤカワ文庫SFを読み、古本屋でSFマガジンや銀背を探して漁るSF者がいたものの、ファウンデーション(に限らず彼の好きな大半のSF)をまともに読んだことがなかったので購入。彼のおかげで『今日の早川さん』の存在を知り、「あ、これアイツだ」ともなったので多少の恩返しともなろう。

全般的には長編コミカライズ共通の難点である強いダイジェスト感は否めないものの、作品内時系列と主要エピソードの整理をしてあるのだろうとは感じました。1巻冒頭にファウンデーションの成立の話がありますが、商用作品としては何作か売れた後に出るたぐいの話でしたし、なにより危機を語る伝説上の賢者(サルヴァー・ハーディンの先代で第一ファウンデーションの歴史心理学者は絶え、その学問は第二ファウンデーションにのみ引き継がれています)の語り継がれている姿ではなく、実像が出てくるのは整理としてはよいのですが、コントロールが難しいところだと思いました。真意が漏れてしまうと、意図的に伝えていないことがあるのも(ハーディンが早々に看破していますが)分かってしまいますし。


セルダンのパートは背景理論が分子運動論的な印象を受けました(確か作者は化学の人だったはずですし)。複雑さに対する認識が時代とともに変わっているので、直近で作りなおすとまた印象が変わりそうな気がしました。他は凡庸な感想ですが、滅び行く銀河帝国と警鐘を鳴らす老人というのは『スターウォーズ:エピソード3』あたりを思い起こしましたが、時系列的には無論こちらが先ですね。


ハーディンのパートは青年期と壮年期。これ以降セルダン危機の警告ペースが急速に長くなりますが、初期にある程度の修正が効いていれば後々の誤差が少ないという判断でしょうか。科学力を背景に軍事均衡、宗教と手を変え品を変え。二度の危機を乗り切った英雄としてサルヴァーの名も人々の記憶に刻まれていきます。


ここから2巻でリマー・ポエニッツのパート。彼は神学校を退学して貿易商人になった身上。これはそのままファウンデーションの戦略の有効期限を反映しており、ファウンデーションが科学技術と同時に宗教を展開していく手段が地方領主に歓迎されなくなってきています。地方領主の側もハーディンのパートで既に自身で原子力を動かす力がない状態でしたし、銀河帝国時代から周辺王侯はいたのですが、新興貴族の悲哀など(ハーディンの場合は若年王と摂政の叔父だったのでもう少し時代が下っている感じがありますが)中々に退行している部分があります。


最後がホバー・マロウのパート。ここでファウンデーションの戦略が宗教から小口の貿易に変わります。一度贅沢を覚えてしまうと後戻りできないというところでしょうか。地方領主側は第一市民(まあ、要するにローマですな。銀河帝国が壊滅していなければ皇帝は僭称できないでしょうが)となっていました。物語の進行でファウンデーションの科学技術などの発展具合はよくわからないのですが、地方領主側が次第に近代に近づいているので時代が下っている感じが分かります(そして概ねファウンデーションの戦略も人類の歴史をなぞっていく形で進んでますね)。


全般的に西洋人から見た人類の語り直しというところで、時代の問題か人間以外出てきませんが、こういう屋台骨的な作品を元に後発の作品が溝を埋めていった感じがしました。歴史物好きなのでこういうのいいですね。