復習:新世紀エヴァンゲリオン 第七話「人の造りしもの」
民間団体がが対使徒用に開発したジェットアローン(JA*1)がお披露目会場で暴走する話。ネルフが日本政府との関係が良好ではないことが描写されている。漫画版では丸々カットされているエピソード。
『エヴァ』らしいところとしては
- 極秘のはずのネルフの資料が漏れている
- ATフィールドのこと
- エヴァ初号機の暴走
- JAの暴走はネルフによって仕組まれていたものだった
など、裏で謀略をめぐらしている人間がいて、真実は常に一握りの人間しか知らないという描写。更に、ネルフ側は事前にダミー情報を流したということを把握しているという具合。作戦担当部長のミサトでさえ蚊帳の外という状態。新劇場版でリリスの存在を知っているのとは大違い。
面白いのは1話「使徒襲来」での初号機の暴走に驚いていたリツコがここでは事情を知っている側に回っているというところ。知った上でミサトが無茶な作戦を実行しようとすることを止めこそすれ、実態を明かしはしない。JAの融合炉が止まることを知っているからではあるのだろうけど、この態度は機密であっても惨事には代えられないと停止パスワードを教えてしまう時田(JA開発側の人)とは好対照。
『エヴァ』全話を通して真実、ガセを含めて登場人物の情報差からくる行動の差を観察するのは面白い。その中で真実を知ろうとして二重スパイとして暗躍する加持*2が命を落とすことになるのは必然なのか。テレビ版ではこういった謎は全く解決せずに深読みをして楽しんでいた自分みたいなタイプは加持同様とどめを刺されてしまうのもまた皮肉。
他には登場人物というか『エヴァ』全体を通じて貫かれているポリシーというか、心構えが端的に台詞として現れている部分がある。
一つ目は時田がサキエル戦での初号機の暴走を挙げ、ネルフがあてにならないといったことを話したときのリツコの反論。
時田「まさか科学と人の心があの化け物を抑えるとでも?……本気ですか?」
リツコ「ええ、もちろんですわ」
エヴァをコントロールするのが「科学」と「人の心」と、時田は皮肉で言ったのだろうがこれは核心を突いている。後に判明することだがエヴァはアダムのコピーである。そして、その力は一万二千枚の拘束具(特殊装甲)によって束縛され、コア(=チルドレンの母親の魂)とチルドレンによって制御される。
そして、この段階ではまだ分かりにくいが、全編を通して見てみると、エヴァはアニメの比喩になっている。この段階でも「技術と魂を費やしてアニメを作っている」程度のニュアンスはある。そして、何よりその技術と魂を費やしているものがオリジナルではなくコピーであるというところに屈折がある。
このことについてはまだうまくまとまってないので「エヴァとは何であるか?」という問いに本編がある程度進んでからまた話をすることにしたい。
もう一つ気に入っているのは
ミサト「奇跡を待つより捨て身の努力よ」
という6話「決戦、第三東京市」の
日向「白旗でも揚げますか?」
ミサト「ナイスアイディア。でもその前にちょっちやってみたいことがあるのよ」
にも通じるポジティブな台詞。庵野監督自身もエヴァには当時の監督の気分が込められていると言っているし、現場で奮闘している姿の端々が見えてくるようで私は好きです。
劇場版でもポジトロンライフルを急造で間に合わせようとしている現場の声だったり、人の手でケーブル引っ張っていたりとヤシマ作戦でディーテルアップされていたところだったと思いますし。