∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』メモ

日本語で言えば「思えば遠くへきたものだ」といったところだろうか。このセリフをはじめて創作で読んだのはスーパーファミコンの『MOTHER2』だったように思う。夜突然ドアを叩く悪友。そこからすべてが始まり、新興宗教から女の子を助け出し、ゾンビに囚われたと思ったら寄宿舎育ちの天才児が助けに来たり。サターンバレーでコーヒーを飲んでいるときに始まるナレーションのはじまりの文句だった。

MCUもはじまりから10余年。フェーズ3もこれで終わり、オリジナルのアベンジャーも半数がいなくなった。特にアベンジャーズのアイコンであるトニー・スタークーーアイアンマンの喪失は人々に大きな不安をもたらしていた。世界は次のアイアンマンを求め、トニー・スタークが選んだ後継者はピーター・パーカー、スパイダーマンだった。


冒頭、学内放送で『アベンジャーズ:エンドゲーム』の結果復活した世界の半分の人口が復帰した様子は雑に説明された。消えなかった人たちは5歳年を取って、消えた人は消えた時の年齢のまま復帰した。そんな中でピーター、ネッド、MJ、フラッシュが全員消えた側というのは恣意的な感じもあるが、ま、そこはそういうものだろう。戻って来てからの8ヶ月間でどのように復帰していったのか語られないが、それはフェーズ4の大人たちに任せるという塩梅だと思う。

前作『ホームカミング』がホームカミングパーティーだったように、今作『ファー・フロム・ホーム』は劇中ではピーターたち科学部のヨーロッパ旅行を表している。そこに元素をモチーフにしたエレメンタルズが襲いかかり、ミステリオが登場して助ける。

今作のミステリオはヒーロー然した自称異次元人で、アース-833からこのアース-616に来たと言っている。原作読んでいる人はミステリオがヴィランだと知っているからなんのヒントにもならないが、MCUはアース-199999で、アース-833は『スパイダーバース』でも出てきたスパイダーマンUKのアース、アース-616はコミックスのメイン舞台だ。彼は異世界をメタ的に見れる存在でもなく、見れたとしたら嘘をついている。おおよそ何か目的があってヒーローのふりをしているのだろう。

地球の脅威エレメンタルズを倒すということでニック・フューリーに夏休みを乗っ取られたピーター。一時的に脱出を計るもののそうそう逃げ出せるわけもなく旅行の経路も変えられてしまう。その過程でピーターはトニーの遺産のイーディスを受け取る。これインサイト計画では……というアイアンマンシリーズによくある、真の敵は己の過去の行いというモチーフが登場。


そして、学生生活とヒーロー生活の板挟みに遭ったピーターにこれでもかというくらいいいやつぶりを発揮するミステリオ。ピーターはすっかり信用してしまい、トニーの遺産であるイーディスをミステリオに渡してしまう。と、ここで種明かしとばかりに手のひらが返され、ミステリオはトニーに敗れた人たちによるドローンAR技術の結晶だったことが明かされる。過去の『アイアンマン』シリーズのあの人とあの人という演出も。

チーム・ミステリオの目的はある種トニーへの復讐で、トニーが作ったもので人々の不安を利用し、次のアイアンマンとして人心掌握という名の世界征服を企んでいる。アベンジャーズが世界に名を馳せたニューヨーク、チーム・ミステリオにとってそれはロンドンだった。しかし、その企みは偶然にもチーム・スパイダーに暴かれ、スパイダーマン対ミステリオが成立する。

舞台はベルリン。ここからコミックらしいミステリオ戦となる。ゲームのような幻想的な世界。バットマンアーカムシリーズのスケアクロウのように直接本人の恐怖を再現するわけではないが、ミステリオが思うピーターにとっての恐怖を投影していく。ここで冒頭、復活したピーターからスパイダーセンスが消えたことが効いており、ドローンARのプロジェクションだと分かっていても追い込まれていく。最後にはピーターはチーム・スパイダーの存在を漏らしてしまい、電車にはねられてしまう。


遠路はるばるピーターを迎えに来たのはハッピー・ホーガン。ミステリオのせいで不安定になっているピーターに『キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー』のホテルの有料チャンネルの話をして身の証を立てるなど、この人はピーターにとって不思議な立ち位置の人なんだなぁ。責任を感じて周りにあたってしまう姿や、ピーターのホログラムによるスーツ設計の姿を見てハッピーはピーターにかつてのトニーを重ねる。BGMはもちろんアイアンマンのACDCの曲。過去の敵に今の自分を打ち砕かれて挫折し、新しいスーツで逆転を狙うというアイアンマンシリーズの骨子がここに完成する。

そして決戦の舞台ロンドン。ドローンARの内側にソニーを感じたけど、あれはどうしてだろうか。チーム・スパイダーとそれを助けに行ったハッピーはややコメディーパート感のある扱い。ネタ扱いされていた先生もエレメンタルを見て「『パワーレンジャー』だ!」という声に「『ヴォルトロン』だろ」と言うなどそんな感じ。

多数のドローンに圧倒され苦戦するスパイダーマン。アイアンマンも『アイアンマン2』ではドローン軍団と戦ったのでした。数に押されながらもスーツと持ち前の知恵と盾と即席投げ爆弾とキャプテン・アメリカとソー、そしてDIYで戦った『アイアンマン3』その全てがボロボロになったスパイダーマンに重なってついミステリオと対峙。ここで、覚醒したようにスパイダーセンスが復活。サム・ライミ版『スパイダーマン』でグリーン・ゴブリンが自分のグライダーで死んだように、ミステリオにもドローンの玉が直撃……したかに見えるも、それはミステリオの幻影。しかし、スパイダーセンスが復活したスパイダーマンは自分に向けれた銃口に気づき、イーディスを奪還。ドローンの攻撃を中止。イーディスが「幻影ではない」だと確認したミステリオも動かなくなる。


橋の下で満身創痍のピーターとドローンからの襲撃を辛くも耐え抜いたMJが再開。プレゼントはハッピーから渡されてしまうし、壊れてしまうし、向こうからキスされてしまうし、全く計画通りいかなかったピーターだが、無事2人の心は通じ合ってハッピーエンド。とはいかないのがスパイダーマン

エンドクレジット後にはミステリオの合成画像で作られたフェイクニュースを流すニュースサイト、デイリー・ビューグルのJJJ。演者はサム・ライミ版と同じJ・K・シモンズ。遠くに行ったはずが、物理的にも、そしてMCUを超えたスパイダーマンというシリースとしてもホームに戻って来た感じ。そして明かされるスパイダーマンの正体。原作でもスパイダーマンの正体が明かされることはあったが、MCU、そしてアイアンマンの後継者という視点で言うとアイアンマンと同じように世界に対して素性を明かすヒーローになり、周りの皆が危険な立場になってしまう。この様子だとミステリオも生きてそう。

そして更なるエンドクレジット。本作に出て来たニック・フューリーとマリア・ヒルは『キャプテン・マーベル』に出て来たスクラル星人。当のフューリーはというと、クリーの宇宙船の中。フェーズ4の詳細日程は明かされていないが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の3作目か、『キャプテン・マーベル』の2作目になるのか。