∀ddict

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Netflix『サバイバー 宿命の大統領』(原題:DESIGNATED SURVIVOR) S1


評価

  • 4/5点 (とても面白かったけど、1シーズンで20話越えているので気軽に勧められない)

概要

『サバイバー 宿命の大統領』(原題:DESIGNATED SURVIVOR)はNetflixオリジナルのドラマで、シーズン1は全21話。

ジャンルとしては「例外的な規則が適応される異常事態になるとどうなるのか?」というシミュレーションの話です。

本作の例外的規則は原題の「DESIGNATED SURVIVOR」でアメリカの指定生存者制度です。この制度は一般教書演説のように主要人物が一箇所に集まらざるを得ないケースで、大統領継承権保有者のうち一人を離れた場所に待機させることで、不祥の事態発生時にも大統領の不在を避けるためのものです。

日本でもフォーカスは「異常事態」の方でしたが、『シン・ゴジラ

で主要閣僚が乗ったヘリがゴジラの熱線で爆発し、外遊中だった大臣が総理大臣になりました。日本の場合は内閣法第9条と慣習から内閣総理大臣臨時代理の候補を5人選んでおくのですが、指定生存者制度はないはずなので、5人同時に不祥の事態が発生することはあります。その場合は劇中と同じように現役国務大臣から優先して選ぶのでしょうね。


本作の物語はこの制度が連邦議会議事堂がテロリストによって爆破され、閣僚および主要上下院議員の大半が死亡するという最悪のシチュエーションで適応されることから始まります。閣僚は指定生存者に指定された主人公のみが生き残り大統領に。上下院議員もほぼ生き残っておらず、議会も機能しない状態。

印象に残っているところ

キーファ・サザーランドのジャック・バウワーとは違う役柄

主人公は元々誠実さが取り柄の学者で政治家歴の浅い住宅都市開発長官。しかも指定生存者に指定された理由は大統領と政策で割れ、大統領から半ば謹慎処分を言い渡すための処置でした。そして、ここが一番重要なポイントなのですが、誠実さが売りの住宅都市開発長官の役は『24』主人公のジャック・バウワーを演じたキーファー・サザーランド

キーファ・サザーランドというとTVドラマ『24』

CTU(テロ対策部隊)の捜査官ジャック・バウワーを長年演じてきたその人でして、いわゆるタフガイキャラです。また、個人的な印象としてゴシップで私生活でも暴行・傷害などで逮捕されていることも知っていてキツい人という感じでした。それが元学者の気弱なところがある誠実な人というイメージと全くフィットせず、中盤くらいまでは私が一方的に違和感を感じていました。なにせ、プレッシャーのあまりトイレで吐き続けたり、意見の違う人に遠慮がちな発言をしたり、怒鳴ったり、膝を撃ったりしないわけですし(笑)

こういった演者のイメージの特定キャラクターへの固定は古くからある話です。例えば、第二次世界大戦後のTVシリーズ『スーパーマンの冒険』でスーパマンを演じていた俳優ジョージ・リーヴスの死の真相を突き止めるサスペンス映画映画『ハリウッドランド』

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でも描かれていましたが、彼は長年スーパーマンを演じていたせいでそのイメージが強く、シリーズ終了後に他の役がなかなか得られなかったそうです。特にTVシリーズの場合、月1や週1で間が時々開くとはいえ、長いと10年近くはそのキャラクターを見ることになるわけですしね。


『24』と『サバイバー 宿命の大統領』の間にキーファ・サザーランドは『TOUCH/タッチ』でも主演なのですが、残念ながら『TOUCH/タッチ』は見れておらずでして、そこで今回の役柄のような役を演じていたのかもしれません。私にとってはほぼジャック・バウワーからの変化なので驚きが大きいところでした。

ただ、あくまでこれは私の物語外部の情報に根付いた印象の話で、キーファ・サザーランド自身は主人公のトム・カークマンをよく演じていると思います。眼鏡や衣装などの小道具やいかにも神経質そうな仕草など、学識があるかというとよくわからない面はありますが、丁寧な人だということは伝わってきます。

非常事態だからこそまとまるのが難しい

思えば、アメリカは過去の世界大戦で首都機能がある場所を壊滅させられたことがないんですよね。だからこれが初めてのことなのだと思いますが、皆が皆の思惑で動いてまとまらない。

前半は概ね大統領の正当性にケチをつけて皆独自の行動をとりたがり、収束しても非協力的だったり、これまで主人公が積極的でなかった政争に巻き込まれてうまくいかなかったり。後半は一応臨時大統領として認められるものの、次期選挙に向けた調整や、前後半通して核心に近づいて行く連邦議会議事堂爆破の犯人とその動機や過程とがからみあって行きます。

ざっと挙げてみると

  • 大統領の受難
    • 色々ゴネて臨時大統領を認めずに州の戒厳令を発動して半ば独立しようとする州知事
    • 非協力的な軍やNSA
    • 安全でないホワイトハウス(盗聴・内通者)
    • 歴代政権が極秘に進めていた破壊工作が明るみになって対処を迫られる
    • 個人的信条を余所にして利害関係のために信条を曲げないといけない諸問題(銃規制など)への対応
  • 捜査官の受難
    • 連邦議会議事堂爆破の犯人と犯行の解明(ここは物語上のネタバレを多く含むのでこれ以上書きません)

といった感じです。

アメリカにとっての大統領のイメージが想定以上に強い人間であることを期待されているのと、軍部や諜報組織とはうまくやっていくのが難しいという、他の作品でも描かれている問題が描かれます。そして、この両方ともに主人公のカークマンの出自や性格の問題から対応がハードモードになっている印象。

ただ、主人公カークマンが開始時にプロフェッショナルではないからこそ、成長談的な要素や展開ができることに幅ができているところがこの物語の大きな魅力の一つだと言えます。人が成長して行く(しかもかなり年でやったことがない重責を担いながら)過程は見ていて勇気付けられるところがあります。

プロフェッショナル集団の話は業界の特異性や、プロの仕事が観れるという自分が第三者として観察した場合の楽しさでそことはかなり違うなと思いました。『24』もプロフェッショナル集団の話ですが、とかく暗部に向かいがちだったり、息苦しいことになっていくことが多くなっていたように思います。書きながら思ったのですが、このシリーズに対してキーファ・サザーランド=ジャック・バウワーを介して『24』的な物語性を期待していたので、序盤から中盤にかけて違和感を持っていたのかもしれません。

総評

面白かったのですが、話数が多いのと、海外ドラマによくあるシーズンで話が完結していない問題があって、今のところ勧めづらい状態です。アメリカではすでにシーズン2が放送されているそうなのでそれ次第かなと思います。