∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

Netflix『マンハント』(原題:MANHUNT) ユナボマー


評価

  • 4.5/5点 (とても面白かった)

概要

マンハント』(原題:MANHUNT)はNetflixオリジナルのドラマで、今の所公開されているのはアメリカの連続爆弾犯・ユナボマーに関するエピソード。全8話。タイトル通り、特定の犯罪者を逮捕するまでの話のシリーズなのかもしれない。

物語は1995年に言語センスが優れた捜査員が犯行声明文(産業社会とその未来)から(統計)言語学的に犯人を割り出す方法を編み出していく過程と、ユナボマーが特定されてからは、当人とその周囲の暮らしなどが描かれていく。

印象に残った部分

言葉遊びのようなところから始まった(統計)言語学アプローチによる犯行声明文の解読。これが犯人像に迫ったいった過程が一番印象的でした。

他の方法はというと、Netflixのオリジナルドラマ『マインドハンター』で黎明期が描かれていたプロファイリングと、現場の刑事の勘と経験と度胸。この話中では有力だと、現場の勘が重視されているような節があって、容疑者に当てはまるプロファイルを求めていたりと本末転倒な使われ方をしているときもあった。


解読は犯行声明文である『参照社会とその未来』から

  • 文章の形式
    • 特徴的な書式
    • 特徴的な言い回し
    • 特徴的な綴り(同じ単語でも綴りが違う。例:"color"と"colour"など)
  • 文章の内容
    • 出てくる内容
    • 出てこない内容

などを紙やホワイトボードに書き出していって、犯人のパーソナリティを推定していく作業。95年だとまだPCでこういった整理をするには向いてないようで、床や壁に大きな紙を張って記入していくのがビジュアル的にも面白い。

書式は有識者会議の中である一定時期に使われていた博士論文のフォーマットということが分かり、高等教育を受けていたと推測されます。犯行声明文はタイプライターを使っていたので、現代のようにあらかじめ設定したフォーマット内に文章を書くのではなく、フォーマット込みで文章を書き上げていく必要がありました。そうなると、フォーマットを知っていて、ある程度そのフォーマットで文章を書くことに馴染みのある人物。容疑者の中で博士論文のフォーマットを知っている人がそういるわけではなく、かなりの絞り込みに使われました。

また、現代ではあまり使われなくなった古風な言い回しや特徴的な綴りは、文字や単語を覚える時期、その時期に読んでいた新聞や雑誌の語彙、綴りの授業に使われたものが寄与しているのではないか、という推測につながりました。古風な言い回しで年齢の検討がつき、綴りに至っては年代と地域をともに絞る材料になりました。

上記からある程度の容疑者絞り込みが行われた後、家族からの告発(実際には弁護士を介して照会をかけただけで、それを元に家族に会いに行くのは違法。連絡した担当者は更迭されていた)を受けて、筆まめだった犯人の手紙を押収。手紙に犯行声明文と同じ特徴があるかを調べていきます。


そして、この調査内容は証拠として認められ、ないのですこれが。上司も押し切ってきたし、捜査令状にサインさせるのも押し切りでしたし。家宅捜索の結果、爆弾や犯行声明の元となる文章などの物証が出たのですが、犯人に「違法な操作によって入手した証拠は無効だ」と指摘されてしまう始末。とはいえもう物証はあるのだがというところ。

当初ユナボマーに付いていた弁護士は心神喪失状態を訴えることにしたものの、ユナボマーはこれを拒否。自分で弁護にあたり、逮捕に至った言語学的調査を行なった捜査官に揺さぶりをかけます。何を考えているのか黙して語らないまま、ユナボマーは裁判を受けずに司法取引をして刑務所に収監されることとなりました。

ユナボマーが多くを語らなかったことは人々の関心を呼んでいたようです。まだ生きていて今年76歳になるようです。

余談

逮捕に至った調査95年のもので、ユナボマーが1967年に博士課程を修了していることから、少し古い話ではあるので、現代だとどうなるかを考えてみました。


ユナボマーは山奥で電気を引かずに生活していたので、犯行声明文を書こうとするとタイプライターになるでしょう。自筆だと筆跡鑑定(これは95年当時も有効な証拠だった)にかけられてしまいますしね。電気と電話を引いていないので必然的にインターネットにはつながらず、電子メールだと送受信記録から足がつきます。ユナボマーの犯行声明は95年と変わらずタイプライター、ないしはどこかのネットカフェなりで書き上げて印刷されたものになるでしょう。

文書の書式に関してはタイプライターの場合は自発的に選ぶ必要がありますが、タイプライターで書く時点で別の絞り込みができそうです。例えばタイプライター用の消耗品を買っている人間にするなど。

言い回しや綴りはある程度特徴が出てくることには変わりがないと思います。ただ、特徴的なスペルで地域を絞れたのは当時でも偶然に近いものだったので、標準化されていそうなものが近年も有効に働くかはやや疑問です。後は時代的なものもあるのですが、人種差別的表現があり、その人種があまり生息していない地域出身だという話も、次第に大きい都市だとなくなってきているような気はします。

内容に関しては今の方がもっとハードになっていたかもしれませんね。本人は使わないと思いますが、例えば手伝いをしていた図書館の子がSNSにはまり続けていたりしたら、SNSの会社がターゲットになっていたかもしれませんね。「人間の創造性を損ねている」とか「時間を無駄に使っている」とか。

犯行声明文と手紙の比較は著者推定である程度機械的にできるようになっていると思います。ただ、これも「X%、本人だと思われる」の世界なので、有効な証拠として扱われるには難があるかもしれません。


総合してみると、ユナボマーの生活を前提にするとあまり変わらなさそうですね。トレーサビリティーの低い手段を使う必要があるので、そうするとポストに投函になりますし。封筒や箱であれば宛名が印刷したものを張っているのも特に不思議なことではないですし。文書解析によるプロファイリングが進んでいるかどうかでしょうか。