∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

Netflix 『食品業界に潜む腐敗』(原題:『ROTTEN』)

評価

  • 3.5/5点 (見直しはしないけどためになった)

概要

『食品業界に潜む腐敗』(原題:『ROTTEN』)は 動画配信サイト Netflix 制作のオリジナルドキュメンタリー作品。全6話。アメリカ食品業界における諸問題がテーマで、各話概要は以下

  • 1話『はちみつは甘くない』:蜂蜜の需要が急増するものの、混ぜ物をしたカサ増し品や安い輸入品に押され、ある時期になるとカリフォルニアに受粉の出稼ぎに出る。そこで起こる大量失踪・大量死・盗難などの問題の話
  • 2話『食物アレルギー』:あまり実態が分かっていない食品アレルギーの話。主に取り上げられているのはピーナッツアレルギーの話で、農家や調理店舗などがどう問題に対処しているかという話
  • 3話『仁義なきニンニク戦争』:料理番組で取り上げられて一大市場となったニンニク。ところが、海外輸入品に関税をかける団体がある企業だけ関税を免除しており、そこから発生した2件の訴訟によって実態が晒されていく話
  • 4話『真っ黒なチキン』:大企業に小作化された養鶏業者の実情と、養鶏業者内の競争からドロップアウトした業者による妨害工作の話
  • 5話『搾り取るのはミルクか金か』:牛乳の価格の下落により、生計が立てられない酪農家が続出。一方で儲かるが、安全性や健康面などでまだ議論の多い生乳の販売額は上がっていて、という話
  • 6話『もし海から魚が消えたら』:世界中で水産資源が減る中、水産資源保護のためにはじまった規制が金持ちに乱用されたり、出自のよく分からない輸入物など、漁業が直面している問題の話

日本とアメリカだと保護・規制の度合いがかなり異なると思いますが、勝ち目が薄い自由競争辛い。そしてだからと言ってみんな辞めて他のことしてよいのかというとそうでもないので、一定数やらないといけない場合の対策は何かしらしないとまずいなと思いました。

各話感想

1話

蜂蜜の需要が高くてもそうそう量産できないし、無理に増やそうとすると大量死するという無理目な状況設定から始まる。そうなるとある程度輸入に頼るわけだが、カサ増し用の混ぜ物をしてくるところがある。検査費用は業者の自己負担の上、混ぜ物も検査に検出されないようなものになっていくといういたちごっこ。

養蜂業者は収入をカリフォルニアの広大な敷地での受粉の出稼ぎで得ようとするが、大量失踪や盗難なども発生。加えてカリフォルニアへの移動中に蜂が死んでしまったり、全米からかなりの蜂が集まるので集団感染の問題も懸念される。

シロップ業者としてはある程度安価で質が担保できるものが海外輸入できる、養蜂業者としてはカリフォルニアの受粉業が今後も続く(確かこの話だとアーモンドの需要だったと思いますが)という前提で動いているものの、その前提が割と不安な感じで見ていてなんともいえない気分になりました。

2話

タイトルは食品アレルギーだが、主にピーナッツアレルギーの話。ピーナッツアレルギーはかなりメジャーな食物アレルギーで、カートゥーンのキャラクターでもピーナッツアレルギーのキャラがいるのを見かけます。

農家は啓蒙的な組合のようなものを作り、レストランは原価下げるためにアーモンドの代用品としてピーナッツ使ってピーナッツアレルギーの人に出してしまった話と、徹底的に食品アレルギーに気をつけて、食品アレルギーの人でも外食できるレストランを作ったシェフの話。

私は慢性的なアレルギー性鼻炎持ちで幼稚園の頃から定期的に通院してますが、それでも食品アレルギーの毎食気をつけないといけないのと、場合によっては代替手段がないのと、コストのかかり方に比べたら食品アレルギーの方が大変だなと思いました。

何かしらのアレルギー持ちの人が増えてきているので、アレルギーの緩和の方法の研究の話もありましたが、個人的にもここは進展あってほしいですね。

3話

中国業者の闇といった感じの話。関税免除のためにおそらく資金渡してるのと、関税かけられた中国企業がかけられてない企業に関税かけさせるために、アメリカ国内の業者に資金渡したり、刑務所の強制労働で加工させたりといった真っ黒な話。

実際、訴訟になっていて

  • 関税かけられた中国企業がかけられてない中国企業に関税かけさせるためにアメリカ国内業者に資金を渡すが、業者ともめて訴訟
  • 関税かけられてない中国企業の加工ニンニクが安価なのは刑務所の強制労働によるもの。アメリカは強制労働によって作られたものを輸入しない法律があるので、そこに合うかの訴訟

の2件の訴訟を軸に話が進む。

前者は撒き餌になった業者は金や資材をもらったが、餌につられた業者は金ももらえず、訴訟リスクを負った上に他の中国業者の片棒かつがされたことで辛い目に遭う、弁護士と撒き餌の業者はひたすらシラを切るという詐欺じみた話。餌につられた業者はかわいそうではあるものの、都合の良すぎる話だと思わなかったのかと思う面もありました。ただ、かなり生活に困っていたようなので仕方ないのかという感じも。

後者は中国系のアメリカ業者が、非関税の低単価ニンニクを販売する中国業者の加工現場に潜入。現地の人にインタビューしたり、刑務所内の強制労働の様子を盗撮して、裁判所に提出したものの、証拠として認められず、中国への立ち入りもおそらく禁止になった話。盗撮が証拠として採用されないのは裁判所の判断としてはそうかもしれないけれど、関税かける手段もなく、刑務所強制労働ほどの価格破壊に対抗する手段もなく、追い詰められてやった感じがあり、見ていてとても辛かった。

関税かける団体が国(といっても職員が賄賂受け取って便宜図らないとは限らないけど)ないしは公平性を保てる組織が担当してないのがこの件の最大の問題。なんでも民営化して市場原理に任せればいいってもんでもないでしょう感はありました。

4話

養鶏業が個人では立ち行かなくなって、大企業が設備(ヒヨコの孵化、鶏の加工、養鶏用など)やヒヨコを持ち、ヒヨコから鶏に育てる過程を複数の養鶏業者に委託するという形式になった話。

ヒヨコの餌代や上手く育たなかった場合のリスクは養鶏業者持ちで、企業は複数の養鶏業者を抱えているので早く出荷基準に達するように業者同士を競争させる。最上位にはなけなしの褒賞、下位にはペナルティが課せられる。制度に耐えられずにドロップアウトした元養鶏業者は企業の設備や構造が同じ鶏舎に破壊行為を行って復讐をする。

作物や畜産物は外部リスク高いけど日用品なので安価に流通させないといけない問題が出た結果しわ寄せが最末端に来るという、カール・マルクスが『資本論』書きたくなるのも分かる構成。景気良くなって賃金が全体的に上がったとしても値段上げると買えない人が出て来るだろうし。原材料としている加工品や外食産業にも影響出るでしょうしね。

私の田舎の同族経営の養鶏所が高齢化と諸々立ち行かなくなって、遠方の養鶏所を複数経営している業者に経営委託するようになったのが数年前にあったのですが、買いに行っても卵が常にあるとは限らない(売れ残りが出ないようにしてる)加工品の販売がメイン(単価高めの商品を扱う)などに変わっていました。

お金がないと選択肢が狭まるなぁ、という気持ちになりました。

5話

ライフスタイルの変化で牛乳の消費量が激減したというところから話が始まるのですが、言われてみると学校給食以降自発的に牛乳そのものを飲むことはほとんどなくなった気がします。加工品(チーズ、ヨーグルトなど)は食べるのですが。

需要がなくなれば小規模なところはやっていけないわけで、生乳が健康志向ブームなどで価格がつくが、それはそれで問題が、という話。単純に絞ったままでいいわけではなく、加熱などによる殺菌をしていないため、衛生状態や、時間経過で問題起こりそうですもんね。

6話

水産資源保護のための制度が金持ちに悪用されたり、出所の分からない輸入品や闇水揚げ量の増大に寄与してしまったという話。漁師対役所(+学者)で基準値の論争になったり、大きい枠で考えた時の対策が問題を引き起こすパターンでした。

売買できる形で漁業権を決めると、養鶏場の話と同じように、金持ちが漁業権を買い占めて、船を持った船長が小作化するという現象が起こったり、規定量や規定区画を超えた闇水揚げが発生したり。

この辺どうしたもんかというところですね。人類の歴史上取り尽くして枯渇した動物なり海産物も割とあるわけですし。根本的には人類が増えすぎているのが問題なのかもしれません。

印象に残ったエピソード

3話『仁義なきニンニク戦争』でしょうか。利益上げるために国レベルの組織が他の国にとって非合法な手段が取れるのヤバすぎる。弱者はルールを守らないといけないが、強者はルールを変えることができるという、弱い方だったら即座にドロップしたいと思います。しかも市場が円熟してから乗り込んで来るので、設備投資の回収とかどうするんだって話になっちゃうんですよね。

総評

大規模化しないと立ち行かなくなっている業界で、末端にいる人たちがどういう目に遭っているかという話だったと思います。資本主義辛い。

後、輸入品が絡むところは大体競争相手であり、問題行為をしていると言われるのは中国。1話の蜂蜜では検査方法で検出しにくい水増しの方法をいち早く開発している話。3話のニンニクではニンニクの加工作業を刑務所の受刑者に低賃金・長時間労働をさせることで価格を下げていたり、ライバル会社に関税適応させるためにアメリカ国内の業者に金を渡して署名を書かせたり。実際には中国だけではないと思いますが、同じルールで動いてない強大な団体がいるのどう折り合っていけるのでしょうか。

日本でも食品をはじめとして安価な製品は中国をはじめとした海外製品に頼っていますが、それなりに経済成長したはずの国から安価に物が買える代償が何かということですね。実家は完全保護商材の米農家でしたが、自由化していたら第三種兼業農家だったので稲作やめてたろうなと思いました。