∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

Netflix 『汚れた真実』(原題:Dirty Money)


評価

  • 3.5/5点 (見直しはしないけどためになった)

概要

『汚れた真実』(原題:Dirty Money)は 動画配信サイト Netflix 制作のオリジナルドキュメンタリー作品。全6話。

  • 1話『排ガス不正』:ドイツの大手自動車会社フォルクスワーゲン社をはじめとした「クリーンディーゼル」エンジンの排ガス検出量検査の不正の話
  • 2話『ペイデイローン』:日本で言うところの消費者金融がアメリカ先住民部族の補償制度をはじめとした制度悪用をして巨万の富を築いた話
  • 3話『製薬会社の疑惑』:カナダの大手製薬会社バリアン社の粉飾決済の話
  • 4話『カルテルと銀行の癒着』:イギリス資本の大手銀行の上海香港銀行が麻薬カルテル資金洗浄を幇助していた話
  • 5話『メープルシロップ盗難事件』:カナダでメープルシロップが大量に盗まれた事件をきっかけに組合の利権と闇市場があらわになってきた話
  • 6話『ペテン師』:第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプの大統領以前の経歴について、取引をしていた記者や元同僚からのインタビューをまとめた話

1〜4話は自動車製造業、金融業、製薬業とマスメディアだと大口顧客になる業界で深追いしづらい話。5話は他の国ではともかくカナダでは厳しいでしょう。6話は踏み込み方が浅ければ FOX 以外では放送できると思いますが、かなり踏み込んでいるのでアメリカでは厳しいかもしれません。

そういうことで、私の理解としては「マスメディア(今回に限ればTV)が伝えにくい話題を深掘りするドキュメンタリー」といったところです。日本だと制作費出ないだろうし、書籍で出てるイメージです。

なお、上記にはインターネットビジネスは出てきません。Netflix は試用期間を除いて月定額のサブスクリプションモデルで広告も出してませんし、インターネットで問題にされがちな事項はさほど出てこないのであまり問題ないのかもしれませんが。あえて言うならシステム構築に Amazon Web Service を利用しているので Amazon の話と、動画関連の業種(映像制作・配給・販売など)に関してはあまり不都合なことが言いにくいかもしれません。もっとも、この辺りは逆に既存メディアが書くところなのでそちらで読めば良いかと思います。

各話感想

1-4話

1-4話は資本主義社会で「とにかく稼げ」とプレッシャーをかけられて倫理感を失っていくと酷いことになるという話。

不正が明るみになりそうになっても、スポンサーシップを盾にプレッシャーをかけて告発を握りつぶしたり、訴訟になれば原告側の資金が尽きるまでひたすらに引き伸ばしを図る。更にドキュメンタリー公開時に訴訟が続いているものは当然「俺は何も悪いことはしていない」と答えたインタビューが挿入されている。

皆、人に本人が直接何かしらの害を与えて金を稼ぐのを拒否はするだろうけど「自分の目の届かないところで」「直接被害者が見えないように」だとやってしまうものだと改めて思い知らされた。裁判の証拠として提出されていると思われるメールや、会話の録音、文章が流れる度に心が底冷えする思いがしました。

5-6話

5-6話はある特定の業種や人にしかできない抜け道や不正の話。

5話はメープルシロップのことをあまり知らなかったのだが、管理・保存・取り扱い、重さなどをトータルで考えると石油や金に匹敵するケースもあるとのこと。ただし、世界の生産量の大半がカナダのケベック州で占められていて、現地では組合がいて価格調整をしている。となるとメープルシロップを手に入れたとしても流通先に困るのだが、大規模盗難団はメープルシロップ農家を抱き込んでルートを確保していた。抜け道考えて不正する人はどこにでもいるもんですね。

6話はアメリカ合衆国ドナルド・トランプについて。他の話が組織や団体の話なので、登場する人に同情の余地がある場合が多かったのですが、彼の場合は個人なのでややキツく感じました。以下はこのドキュメンタリーで初めて知りました。

  • ゴシップ記者に「とにかく『大金持ち』と書いてくれれば積極的に書いて欲しい」と言ってた
  • 早いうちから不動産ディベロッパーは辞めていた
  • 古くから付き合いがある人は「リッチー・リッチ(漫画の金持ち少年キャラクター)」のままだと思ってるとのこと
  • カジノ事業で作った借金は親が掛け金で払った
  • TV番組『アプレンティス』でトランプのオフィスロケにしたかったが、ボロボロだったので全部セットで作った。結果若い世代に富豪のイメージがついた
  • 不動産事業で「トランプ・○○」というのはネーミングだけ貸していて、実際の事業には関与していない
  • 色々あったせいで怪しいお友達としか取引してないことが多く、そこをつついた司法機関の人を大統領権限でクビにしてる

以前ヒストリーチャンネルで見た『ドナルド・トランプとは何者だ!?』

と概要は被っていたのですが、『ドナルド・トランプとは何者だ!?』の方がよほどマイルドでした。

特にTV番組『アプレンティス』によって若い世代に富豪のイメージがついたというエピソードは目から鱗でした。あの番組が始まる前まではマクドナルドのCMに出てたりもしたんですね。

印象に残ったエピソード

6話『ペテン師』でしょうか。事実にせよ「公人ともなると大変だな」という同情心は芽生えるくらいキツい内容(サブタイトルからして「ペテン師」ですし)で、それ以上に酷いことしてるもんだとも思いました。これでも大統領になれるというのが、民主主義の実験場たるアメリカ合衆国なんですかね。関係者に言わせるとオルタナティブ・ファクトな内容なのでしょうけど。

総評

冒頭にも書いたようにマスメディアだとスポンサーシップを気にして言いにくい内容を取り上げているという印象がありました。それはそれでインターネットというオルタナティブ・メディアの役割を果たしているとして、今後、ますます人が情報を得る手段がインターネットに偏っていく中で、インターネット事業者の中立性がどのように現れて、ドキュメンタリー番組自体の意見として現れてくるのかはまだ見えないなという感じです。

既存メディア側でインターネットの問題に対するドキュメンタリー作る体力なくなると、かつてのマスメディアと裏返しの関係なるだけなので(日本だとNHKが時々ドキュメンタリーやりますが)個人としてどう情報集めて考える基準にしていくのか考えなければなぁ、というところです。

後、組織ぐるみで不正を始めてるケースを聞くにつけ、無茶な目標設定されてない限り、景気があんまり良くないんだなと21世紀的な辛さにただただ打ちひしがれる感じがします。