スーパーマン:シークレット・アイデンティティ(Superman: Secret Identity) #1 レビュー
アメリカでは今日(6/14)から映画『マン・オブ・スティール』が公開です。電子書籍の販売サイトのcomiXologyでもスーパーマンの原作タイトルが$0.99(今のところApple価格だと85円)で販売中です。
映画『マン・オブ・スティール』の日本公開日は8/30とまだ先ですが、それまでしばらくスーパーマン関連タイトルの原作のレビューをしていきたいと思います。
今回取り上げるのは『Superman: Secret Identity』。ライターのカート・ビュシークは日本でも邦訳が発売された『アストロシティ』
アストロシティ:ライフ・イン・ザ・ビッグシティ (JIVE AMERICAN COMICS シリーズ)
- 作者: カート・ビュシーク,石川裕人,ブレンド・E・アンダーソン
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2005/01/31
- メディア: コミック
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アストロシティ:コンフェッション (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)
- 作者: Kurt Busiek,Brent E.Anderson,秋友克也
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2005/03/14
- メディア: コミック
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や、今度小学館集英社プロダクションから再販が決まっている『マーベルズ*1』
マーヴルズ (Marvel super comics (No.046))
- 作者: カート・ビュシーク,アレックス・ロス
- 出版社/メーカー: 小学館プロダクション
- 発売日: 1998/01
- メディア: コミック
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の人です。一口で言ってしまうと「スーパーヒーローがいる日常」を描く人でしょうか。
『アストロシティ』では19世紀からスーパーヒーローがいた架空のアメリカのアストロシティの住人の日常を描く短篇集です。『マーベルズ』はカメラマンの目を通してマーベル世界の様子を描く作品です。
この語り口は『Superman: Secret Identity』でも引き継がれています。
- 作者: Kurt Busiek,Stuart Immonen
- 発売日: 2008/04/11
- メディア: 図書館
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舞台はDCコミックが『スーパーマン』のコミックを発売している世界のカンザス州ピケッツビル。主人公はケント夫妻の子供、クラーク。苗字がケントなのでコミックブックのスーパーマンから取ってクラーク。マンガやアニメのキャラクターを子供につける親って日本でもいますよね。私も知り合いに南ちゃん*2がいました。
両親と叔父夫婦からの誕生日プレゼントはスーパーマングッズ。コミックブック、アクションフィギュア、Tシャツ、ポスター、コスチューム……その時期に発売されたものはほとんどもらってるのではないでしょうか。クラークくん、見たところ高校生くらいで、スーパーマンのことが好きなわけでもありませんが、親族からもらった手前「ありがとう」と言ってプレゼントは押入れ行き。
このクラーク君、もちろんスーパーパワーはありません。スーパーマンになりたいかと聞かれれば「パワーは欲しくないけどスーパーマンの友達みたいな友だちが欲しい」と答える始末。
登校時に女の子に声をかければ「もしかして家から出てくるところ待ってた?」と言われる。いじめっ子には「スーパーマンならこのくらいできるよな」と荷物を取り上げられて捨てられる。昼に食堂でごはんを食べるときにはギークと同じテーブル。ギークの間ではクラーク・ケントという名前は知れ渡っており、座るなり『ニュー・ティーン・タイタンズ』のオリジナルメンバーの話をされますが、コミックは読まないので会話もできず。
放課後は家の農業の手伝い。趣味は古いタイプライターで文章を書くのとハイキング(ここでクラークの独白のかすれた文字がこのタイプライターで打たれたものだと分かります)。独りでできる趣味に特化してます。アメリカの広大な農場の子供だと学校は定時のバス以外で行ききできない距離だったり、近所の同年代の子どもと遊ぶのは難しい……のだということにしておきましょう。
ある夜、クラークは山に出かけて星を眺めながらウトウトしているとーー空に浮いていた。そう。クラーク・ケントは本当はスーパーマンだったのだ!地名や親の名前や友達の名前がちょっとずつ変わっていてこれまでスーパーパワーがない話をしていたのにやっぱりスーパーマンでした。
このあたり話の運び方からしても『スパイダーマン』のような印象を受けますが、思春期の少年がスーパーパワーを身につけたらすることはひとつ。ひと通り能力を試した後(その過程で洪水で取り残された人を救って新聞に正体不明の存在として報道されてしまいますが)、いよいよ金……話し相手を探します。
クラークくん、名前に違わぬ品行方正というかいい子気質があります。X線透過ビジョンで女子のロッカーを覗こうとして途中で止めてますし、それほどお金に切羽詰まってないこともあってか、ピーター・パーカーのようにショービジネス界に進出して荒稼ぎという気は毛頭ありません。この辺はピーターがニューヨーク育ちなのとクラークがカンザスの田舎育ちなのが影響しているのでしょうか。
正体を隠して自分の話を聞いてくれそうな相手を探します。そこで選んだのは自分の記事を書いた新聞記者。写真と録画はダメと釘をさしますが、結局のところ暗視スコープのようなもので録画されていることに気が付き、ヒートビジョンで破壊。話し相手も失ってしまいます。
時は流れハロウィン。伯父さんに誕生日プレゼントとしてもらってたスーパーマンのコスチュームの出番です。アメリカや外国人が多い地域に行くまでは「ハロウィンだからってコスプレするなんて……」そう思っていた時期が僕にもありました。地下鉄にサイヤ人がいたときには絶句してしばらくその場に立ち尽くしたこともありました。なのでハロウィンにスーパーマンの全身タイツを着て遊園地に行くのは普通なんですね多分。
祭りに浮かれる遊園地で火災発生。「鳥か?飛行機か?いや、スーパーマンだ!」とスーパーマンの出番です。火に包まれた人々を救い出し、ひと息ついていたときに女の子が梁の下敷きになっているのに気が付きます。梁を持ち上げたまでは良かったのですが、女の子は学校の同級生でしたし、遊園地の火災を取材に来ていたマスコミに姿を撮影されてしまいました。自分が話し相手に選んだ新聞記者も「私の特ダネよ!」とすごい剣幕で押しかけます。
面倒なことになったクラーク。梁は火事場の馬鹿力で持ち上げられたことにして押しつぶされる芝居をします。たちまち「やっぱりスーパーボーイなんていなかったんだ」と言い始めて散り散りになるマスコミの方々。怪我してる女の子と今梁につぶされてる男の子がいるのに助けないのかよ!とは思いますが、まあそこはどこの国でも同じなのでしょう。
後日学校で女の子と話しますが、彼女はお礼を言ってジョック*3の彼氏と去っていきます。「彼女の話はこれでおしまい」とモノロークが入ります。
そして事故があった遊園地では風貌の似た全身黒づくめの男たちがクラーク・ケントの後を追っていたのだった……。
というところで1号は終了。2号のタイトルは「メトロポリス」高校を卒業して都市に働きに行きます。このクラークの旅立ちは『スーパーマン:フォー・オールシーズン』ほどウェットな旅立ちにはならないでしょうね。親子とも学校を卒業して働く、以上のことはないでしょう。次号以降、クラーク・ケント少年を誰も知らない都市で社会人/スーパーマンとしてどう生きていくかというところです。
アートのスチュワート・インモンはどこかで見たことある絵だと思ったら『New Avengers』シリーズ描いてる人でした。まだ翻訳の先の部分ですが、そのうち邦訳も出ると思います。
話は期待を裏切らず日常密着型でした。主な情報源がインターネットでなく新聞なところがやや古い日常な気がしますが、そのあたりをやってしまうと『ヤング・スーパーマン』になってしまうのでこれはこれでアリでしょう。インターネットを持ち出し始めると話し相手はSNSだったり匿名掲示板になるかもしれませんし、そちらの方向に行くと『キック・アス』ですね。
ラストに出てくるこの手のお話ではお決まりの黒づくめの調査員たち。メン・イン・ブラックなのですが、彼らの目的は何でしょう。
というところで2号を楽しみにしていたいと思います。