∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

邦訳アメコミアドベントカレンダー2012 2日目 『WE:3』

WE3 ウィースリー (ShoPro Books)

WE3 ウィースリー (ShoPro Books)


本書はDC ComicsのVERTIGOという高年齢向けレーベルで出版されたアクション映画の趣きがある大人のお伽話。ブライアン・リー・オマリーによる『スコット・ピルグリム』シリーズの書評でも読んだ気がするが、ある世代以降の昔話は


「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが……」


ではなく


"A long time ago in a galaxy far, far away...."


だろう。寓話の舞台設定を中世から遥か昔、あるいは近未来に変える事で超科学的な存在をより解釈可能なものにし、現代の事情に近づけることで前提たる多くの解釈を必要としない鮮やかでシンプルな物語になる。

この物語の基本プロットは「軍が作り出した生体兵器が廃棄にさいして脱走し追手と戦いを繰り広げる」というハリウッド映画でもよく見るもの。その生体兵器を人間ではなくサイバネティクス実験によって強化された3匹の小動物にすることで、飼い主からはぐれたペットが家に帰る物語にもなっており、より親しみやすくなっている。

ライターのグラント・モリソンは難解なプロット(多分昔の話を魔術師モリソンの脳内フィルターを通して再解釈するとああなるのだろう。この辺りの話は今年邦訳されたバットマンシリーズの回に譲る)を書くことで有名だが、この話は各書評で言及されるほどストレート。


悲劇は冒頭の将軍のセリフに集約されている

「11月には、ダン・ワシントン(引用者注:将軍がWE:3を見せた議員)のケツは大統領執務室の椅子に収まっとるはずだ。彼は、バイオーグの大量生産に寄る従来型戦争の集結を唱えとる。

今やそのための技術は開発された。改造用の動物たちを増やせ。大衆がこの手のことには敏感なの分かっとるな。

あの、メカの塊に接続された哀れな実験体達は我々の意図や予測よりも長く生き過ぎた。

きみにとっては生物工学技術の見事な成功だろうが、私にとっては怒りに満ちた3匹の小動物だよ。殺戮マシンにしゃべり方を教えるとは、どんなバカだ。

彼らをあの悲惨な境遇から開放してやりたまえ、トレンドル博士。そして、メディアの取材に備えて身ぎれいにしておくんだ」


なんたる軍のいや、人間の都合。連れ去って改造し、不要になれば処分する。そんな人間に3匹の動物はどう向き合うのか。1号(犬)は人の言うことを信じ、2号(猫)は人を嫌い、3号(ウサギ)はどちらでもよさそう。そんなトリオの逃亡記の結末やいかに。


帯にも書いてありましたが、タイトルと動物3匹というところから手塚治虫の『W3(ワンダースリー)』

W3(ワンダースリー) (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

W3(ワンダースリー) (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

が連想されました。こちらも面白い話なので是非。