邦訳アメコミアドベントカレンダー11日目 『スコット・ピルグリム:vsザ・ワールド』
- 作者: ブライアン・リー・オマリー,石川裕人,御代しおり
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: 単行本
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こんな人におすすめ
- 日本の漫画風のアメコミが読んでみたい人
続編・関連作品
- 『スコット・ピルグリム:インフィニット・サッドネス』:続編。原作3巻と4巻収録
- 『スコット・ピルグリム:ジ・ユニバース』:続編。原作5巻と6巻収録。完結
あらすじ・感想
え?発売日を見ろって?オーケー。2010年発売だってのは俺も分かってる。俺だって最初は目を疑った。でもこの海外マンガがすごい2011のお知らせ :: 1000planchesの選考候補なんだ。それにこの後『スコット・ピルグリム:インフィニット・サッドネス』と『スコット・ピルグリム:ジ・ユニバース』の話もするのに1巻だけ抜けてるのも悲しいだろ?今1巻と言ったけれど、正確には原作1, 2巻。日本では2巻を1巻にまとめて発売している。日本版1巻2巻のサブタイトルはそれぞれ原作1巻と3巻のものだ。
さて、この『スコット・ピルグリム:vs ザ・ワールド』はONI Pressから出版された。ブライアン・オマリー作。俺は電子書籍販売アプリのcomiXologyを入れるまで、この出版社の存在を知らなかった。アメコミ検定みたいな話になるけれど、日本人が知ってるアメリカン・コミックスの出版社なんてDCとMarvelがいいところで、90年代に邦訳を買っていた人がダークホースとイメージを知っているくらいだろう。実際、売上だけで言うとこの4社どころかDCとMarvelの2社で総売上の大半を占めている。
そんな状態で般若の面がマークのONI Press。アメコミだけどフルカラーではなくモノクロ。キャラクターもかなりディフォルメされて頭身も低く、マンガっぽい。キャラクターが劇中で日本製ゲームを遊んでいたりするし(彼らはNINTENDOがお気に入りなのかと思えば、今はPSPで遊んでたりする)日本の作品の影響はかなりあるだろう。
そんな作品の邦訳がなぜ発売されたかと言うと、映画が作成されたから。けれどアメリカでの収益が振るわず、『スコット・ピルグリム:vsセカイ(仮)』という「おいおいそりゃねーだろ」という直訳の仮の邦題のまま、日本での興業が危ぶまれていた。日本からは双子のキャラに斎藤兄弟がキャスティングされていたが、公開されたのは結局かなり後で、3巻の発売前日だった。映画を観ると「あー、うん」とも言いたくなったがまあ、そういうもんさ。興業が危ぶまれていた時点で良い意味でも悪い意味でも普通の作品じゃない。
前置きが長くなったが、この話は20世紀最後の辺りに青春を過ごした北米人たちの昔話。21世紀の今ではまだリアリティをもって読めるが、そのうち「むかしむかしおじいさんとおばあさんが……」から始まる御伽噺になってもおかしくないだろう。もっとも、おじいさんとおばあさんが、大学を出て仕事もしないでぷらぷらしてる自称バンドマンになった時代は相当悲しいものがあるが。
手数を出せばヒット数が表示され、敵を倒せば経験値とお金が手に入り、レベルアップする。ゲーム(主にRPG)がこの童話の構成。頭の中にハイパー・スペースがあるスコットが一目惚れしたお姫様に付き従うは七人の小人、ではなく邪悪な7人の元カレ。お姫様を助けるために七人の邪悪な元カレを倒す戦いが始まったのだった。
とまあ、大層な前ふりをしましたが基本的に日本のラブコメみたいなものなので親しみやすいのではないでしょうか。