∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

キャプテン・アメリカ:ニューディール

キャプテン・アメリカ:ニューディール (MARVEL)

キャプテン・アメリカ:ニューディール (MARVEL)

結局我慢できずに買って来ました。


サブタイトルのニューディール。F・ルーズベルト大統領のニューディール政策(新規蒔き直し政策)としても使われていますが、元々は"New Deal"でトランプのカードを配り直し(をして新しくゲームを始めること)を指します。9.11後の変わってしまった状況を指すのでしょうね。カードの配り直しを受けたのはアメリカで、他は配られたカードで勝負をしなければいけないからこそ手段を選べなくなったのではありますが。

マーベルナイツブランドでアイズナー賞受賞作家ジョーン・ニー・リーバーがライターなので、かなり現実よりの話に仕上がっています。この「現実」はあくまでアメリカの現実というところが、アメリカ外での評価を分けそうです。

今回のキャプテンアメリカの敵はスーパーヴィランではなくテロリズム。具体的にはフェイサル・アル−タリクという原理主義テロリスト。爆弾と銃を使い、アメリカの正義を批判する――普通の人間です。

キャプテンアメリカが彼を倒してめでたしめでたし、とはいきません。これまでのアメリカの正義の名の下に行われた非道を振り返り(ドレスデン爆撃など)アメリカへの批難を受けながら、ヒーロー以前にいちアメリカ市民であるキャプテンアメリカ(=スティーブ・ロジャース)が自由の精神のためにどのように立ち向かっていくべきかを模索していく話です。

特に最終話はそれぞれの正義の名の下に造り出された人間同士の殴りあいながらの問答を交わしています。ガンダムなどのロボットアニメでもよく見られますが、議論の如何に関わらず殴り合いで言論封殺できるので、両者後味悪く終わることもあります。現実通り立場の上でアメリカが勝ちはすれど、といったところです。

9.11というアメリカにとっての大きな出来事に対する関心やメンタリティに大きく関わっている作品なので日本人(特にスーパーヒーローを期待している層)にはあまりお勧めできないかなと思います。


この後マーベルユニバースの中のアメリカも不明瞭な時代に突入します。ヒーロー同士の内戦(シビルウォー)を経てキャプテンアメリカは死に、ヴィランがヒーローにとって代わります。このあたりの邦訳が出るのは何年後になるか分かりませんが、現実の出来事にある程度の評価が定まってから邦訳が出るといいですね。