∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

『Ecole(エコール)』

Ecole(エコール)―Les poup´ees d’Hizuki dans l’Ecole

Ecole(エコール)―Les poup´ees d’Hizuki dans l’Ecole

id:sanakanさんに薦められた時点でSFかB級かいかがわしいかのどれかなんですが、最後でした。

この映画のテーマは単純に言ってしまえばシモーヌ・ド・ボーヴォワールの代表作『第二の性』の一節

「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」

でしょうか。

もう少し突っ込んで言えば、近代社会において社会(=Ecole:劇中で〈学校〉と呼ばれる舞台)が〈女らしさ〉を規定し、それによって〈女〉として形どられていくことでしょうかね。

副題のイノセンス(≒タブ・ラ・ラサ*1:白紙)があらわす〈少女〉が加齢的な成長と〈学校〉が与える規律訓練*2によって〈女〉になる様子を描いている作品、と言うべきか。

〈学校〉が与える規律訓練が

  • 生物:〈学校〉が森の奥にあるのでその中で生きる術
  • バレエ:〈学校〉に投資している〈男〉たちを喜ばせる術

であり、主人公に先輩たちが〈学校〉で生きるために重要なこととして教えたことは

  • 数を数えることと:バレエに使う以上の数は数えられない
  • 時計が読めること:起床や就寝時刻を守るため

である。つまり、〈学校〉はそういう〈女〉を作るための場所なのだ。

それだけに

  • 一番優秀なバレエダンサーが外の世界に連れて行かれる
  • 年長は夜の踊り*3を男たちに披露しなければならない
  • 外の世界の知識が無い少女たちが〈学校〉から追い出されるラスト

にはえもいわれぬ気持ちを押し付けられてしまう。実際、男はまったく責任が無いとは言い切れないので「うむむ」と唸るしかないのだ(この辺りうまいように言う人いますよね)

これは極端にディフォルメした話だが、女性に限らず男性も含めて我々は社会によって規律訓練を施され、それに従って生きている。

映画の登場人物のようにその規律訓練の外に憧れることもあれば、規律訓練の内に留まっていたいと思う気持ちもある。例えばSFだったりファンタジーの世界観に憧憬を抱くこともあるし、就職したくないと思う学生やニートもいる。

この映画はそういった近代社会を直接描写せずに少女と〈学校〉という閉鎖空間を通して描いているのだ。


……と書いてみましたが、正直見てて辛かったです。

ハリウッド形式の映画に慣れきっている身としては

 ・冒頭にスタッフロールが延々流れる
 ・日常描写が丁寧なのはいいのだけど冗長すぎる気がする
 ・この手の映画って総じて眠く(ry

などの理由で内容面で辛かったし、空調が悪い劇場だったので120分の長丁場で気分が悪くなりました。

正直120分要らないと思いましたし、テーマが現代の社会と少女(女)であれば『マルドゥック・スクランブル』の映画化に金を出してやってくれないかと思ってしまいました。

*1:イギリス経験論的な考え方では「人間はタブ・ラ・ラサ(白紙)の状態で生まれる」らしい。ジョン・ロックの主張

*2:ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』より。都会の人間が満員電車に黙って乗っていられるのもそういう訓練を受けたからである。

*3:言うまでも無く売春の隠喩。男の顔が見えず、相手が複数であるというところからもそれはうかがえる。