∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

メタアニメとしての『機動戦艦ナデシコ』

Warning
これは曲解芸であって、本物の作品とは一部異なることがあります。なお、この文章中に表れるメタ部分は筆者の主観によるもので、実際の事実とは一部異なる場合があります。

機動戦艦ナデシコ』は1996年にテレビ東京系列で放映されたアニメである。その内容を説明しよう!劇中勢力はこんな感じ。

  • 地球連合(一般人)
  • ナデシコクルー(一部オタクもいるが基本的に非ヲタの変人)
  • 木星陣営(アニヲタ)

TV版のあらすじ

主人公はかつて火星……もとい、秋葉原に住んでいた少年・天川アキト。木星トカゲの襲撃を受けて壊滅状態に陥った秋葉原の唯一の生き残り。アニヲタで『ゲキガンガー3』というダイナミックプロを彷彿とさせるアニメ*1が第図気。コックを目指しているが、オタク遺伝子を持っていることによって手にマーキングが現れており


「お前はオタクだからなぁ」


と言われて何度も店をクビに。店をクビになったある日、小さいころに一緒にいた女の子・御統ユリカと再会します。アキトはユリカの落し物を届けに行く最中に巻き込まれフラグが立ち、ナデシコに同乗することになってしまうのでした。

そこでアキトはさまざまな変人たちと出会います。天然ボケの艦長。そろばんをはじく謀略家。魂の名前を持つ男。電子の妖精。声優……なんでもありです。途中まで一般人が同乗していたのですが、そのうちメンバーの異常さに耐え切れなくなり脱走したり自爆したり……最終的には一人もいなくなり、ナデシコは変人たちの手に渡ります。


さて、物語が進むにつれ、木星トカゲを操っていたのは『ゲキガンガー3』が大好きなアニメオタクだと判明。話を聞いてみれば一般人が秋葉原からオタクを追放したことにキレて


「一般人ヌッコロス」


と意気込んでいたとのこと。変人ばかりのナデシコクルーは身内にアニヲタがいたこともあり


「アニメオタクも人間だ、仲良くしよう」


という意見で一致します。更に『ゲキガンガー3』の全話鑑賞会を開くなど、一時はアニメオタクのペースにすっかりのせられてしまいます*2。アニメオタクのアキトに批判的なスタンスのナデシコのスポンサー会社の会長のアカツキでさえ、このときばかりは饒舌にコメントをしてボロを出してしまいます。アカツキは他にも


「僕の見ていたアニメは善悪は相対的なものだって言っていたがね*3


などと発言し本性を露呈しています(本人は否定的ですが)


そのノリのままにナデシコは一般人とアニメオタクとの間の架け橋になろうと紛争するのですが一般人は


「アニメを真に受けているようなキモいのと交渉できるか」


と言い、アニヲタも上層部は


「一般人なんて信用できるか」
「『ゲキガンガー3』なんて所詮子供だましのアニメに過ぎない」


と身内をも突き放します。更に自分の父親を死に至らしめた遠因がユリカの父にあることが判明し、アキトは深く傷つき、一時はアニヲタである自分でさえも否定せざるをえないという状況に陥ってしまいます*4


その後、舞台は秋葉原に移ります。アニメのアーカイブがアニメオタクたちに一般人とは異なる特異な視点や感覚を身につけさせていることが判明し


「こんなものがあるから論争がなくならないんです!」
「いや、一度作ったコンテンツは骨までしゃぶりつくさないと」


というやり取りがユリカとアカツキの間で交わされ、ナデシコはアーカイブを破壊することを決断します。しかし、最深部には説明オバサンことイネス女史が取り残されており、アキトは彼女を救出に向かいます。最深部にたどり着いたアキトは、イネスはかつて自分が秋葉原で助けた少女だということを知ります。


「自分は無力でもないし、まだ帰る場所もあるんだ」


アキトはそう悟り、最終的にアニメオタクであることも含めて自分を受け入れて本編は終了します。

劇場版のあらすじ

さて、続編の舞台はTVから映画に移ります。アキトは近頃流行のオタクの中でもボソンジャンプというお金になる能力を持っていました。そのため、新婚旅行の最中に木星の生き残り、もとい……アニメオタク過激派――二次元萌え原理主義者に拉致されてしまいます。おそらく新婚旅行中でなければもう少し穏便だったのかもしれませんが、隣に女がいては見逃すわけにもいきません。燃え上がる喪男のオーラで乗っていたシャトルは爆破され、公式には死亡したことになってしまいます。

アキトは実験材料として脳みそをいじられた結果、五感のほとんどを失います。しかし、オタクのコアの一部である戦闘美少女が発する萌えだけは残りました。もはやアキトはユリカやルリといった現実*5の女性にハァハァすることはできなくなってしまっていました。アキトはラピスという少女を手元に置いて自分の五感のサポートをさせます。このラピスの本名はラピスピズリ、和名は瑠璃。つまりルリの代償であり、CV:仲間由紀恵という現実声*6の少女。そう、アキトは萌ヲタになっていたのでした。アキトはそのことを自分たちの墓参りに来ていたルリに告白します。


「おかしいだろ?感情が高ぶるとこうなるんだ。」


そう言うアキトの体には全身にオタクのマーキングが浮き出していました。そんなアキトにTV版の面影はありません。彼を突き動かすのは萌え一辺倒になってしまったことへの復讐心だけでした。


かつてのナデシコクルーは電子の妖精のルリ(パソコン通信)の弟分のハリー(インターネット)を通して終結し、ユリカを救出するためにアキトに協力しようとします。しかし、アキトはあくまで一人で戦い、大局的に見れば徒労でしかない戦闘に勝利します。それも試合に勝って勝負に負けるという辛いものでした。この勝利によってユリカを取り戻したのですが、ユリカの気持ちに応えられなくなっているアキトはラピスをつれて旅立っていきます。現実の恋愛でもなく、萌えでもない自分の居場所を探して……。

(2006/06/14:初稿)

*1:更に言えばダイナミックプロ作品に影響を受けたであろうガイナックス作品、つまり『新世紀エヴァンゲリオン』の暗喩

*2:新世紀エヴァンゲリオン』の頃にさまざまな層が『エヴァ』語りに参入してきたことの暗喩

*3:おそらく『機動戦士ガンダム』のこと

*4:『エヴァ』にはまっていた人が自分の痛さに気付き、それを必死に否定したがる現象の暗喩。アカツキがアキトに否定的なのもこのせい

*5:ナデシコ』の世界の中での現実

*6:アニメ声との対比のつもり