∀ddict

I'm a Japanese otaku. I like Manga, Anime, Games and Comics.

Netflix 『ブラック・ミラー』S3


評価

  • 5/5点 (何度か見直してる)

概要

『ブラック・ミラー』(原題:Black Mirror)は 動画配信サイト Netflix のオリジナル作品。社会風刺SF(イギリス制作だけあってジョークが黒め)。シーズン3は全6話。

  • 1話『ランク社会』:SNSなどにあるランクが個人の生体情報で一本化され、生活の全てがランクで制限される話
  • 2話『現実拡張ゲーム』:VRの話
  • 3話『秘密』:ハッカーに秘密を握られてしまい、SMSの指示のままに動かざるを得なくなった少年。少年がハッカーに握られてしまった秘密とは?
  • 4話『サン・ジュニペロ』:心と体を切り離して、心が仮想空間で生きれるようになった時代の話
  • 5話『虫けら掃討作戦』:兵士のPTSD防止施策みたいなSF話
  • 6話『殺意の追跡』:SNSに連動して殺人蜂が派遣される話

前のシーズンのエントリにも書きましたがいずれも後味よくないエピソードなので、そういうのが受け入れられる気性・体調でない場合は視聴はお勧めしません。

各話感想

1話

シーズン4まで公開されている現在で一押しのエピソード。シリーズ全体のカラーを表しているのはシーズン1-エピソード1ですが。評価が下がると建物には入れなくなったり、ファストレーンに並べなくなったり、家が買えなくなったりと酷い。元高評価で今低評価の人の生活が出てきたり、とても辛い。

2話

VR企業の人めっちゃ流暢な日本語喋ってて笑いそうになりました。何重にもVRか現実か分からない構成になっててちょっと分かりづらいかなと思いました。

3話

とにかくみんな謎のアイコンに秘密を握られていて悲壮感が漂う。目的を達成しても最終的に秘密はバラされるというひたすら酷い話。アノニマス的な話と、ちょっとでも悪いことすると総叩きに会うインターネット社会、現実になると怖い。

4話

百合。世界観が明かされるのも後半からで、後半怒涛の逆転展開で驚くばかり。

5話

頭にチップ埋め込まれる系の話。反体制の人たちを兵士が躊躇いなく殺せるようにチップが化け物としてレンダリングしていたが、それが壊れかけておかしくなった兵士の話。しかもシステムは録画再生できる。帰還兵の適応障害の話は色々な話で出てきていて考えさせられます。

6話

時間が飛び抜けて長い割に面白さが強くなっているわけでもなく、という話でした。

印象に残ったエピソード

1話『ランク社会』でしょうか。「○○疲れ」を端的に表していると思いますし、炎上その他リスクを考えるとろくな発言できなくなってるのもよくありますしね。

総評

S3は1話, 4話、次いで3話くらいで他はまあ好みかなぁ、という感じになってきました。S4はますますその傾向が強くなってきているので、誰かにキュレーションしてほしいなぁと思うところです。

Netflix 『ブラック・ミラー』S2


評価

  • 5/5点 (何度か見直してる)

概要

『ブラック・ミラー』(原題:Black Mirror)は 動画配信サイト Netflix のオリジナル作品。社会風刺SF(イギリス制作だけあってジョークが黒め)。シーズン2は全4話。

  • 1話『ずっと側にいて』:事故で恋人を失った女性が友人に死人と通信できるソフトを勧められて、死人が生きているかのようにの疑似体験がどんどん拡大していく話
  • 2話『シロクマ』:記憶を失って気がついてみると追われる身になり、その周囲には不気味なギャラリーたちが
  • 3話『時のクマ、ヴォルドー』:アニメキャラを選挙に出馬させる話
  • 4話『ホワイト・クリスマス』:周囲に人気のない山小屋でクリスマスを祝う2人の男。身の上話を話していくうちにさらなる事実が

前のシーズンのエントリにも書きましたがいずれも後味よくないエピソードなので、そういうのが受け入れられる気性・体調でない場合は視聴はお勧めしません。

各話感想

1話

アイディア自体はそれこそ古典からありそうだけど、インターネット上(主に個人SNSなど)から収集した故人の情報や携帯電話などに含まれている情報を元にAIを作り出し、初めはテキスト、次は音声、そして肉体という細かいステップが現代風。昔だといきなりアンドロイドとか注文してたと思う。

後、天馬飛男になれなかった鉄腕アトムが捨てられたのと同じ問題で、開示されていない情報は分からない(性生活とか)、成長しない(外見は変わらず、思考も基本的には過去から出ない)などがあり、最終的に家に閉じ込めてるというみもふたもない状態になっていました。

2話

インターネットでの犯罪者に対する私的制裁行為(炎上)を現実に持って行ったらこうなるのだろうなという寓話。役者や見物人を引き入れたアトラクションと化していて、繰り返し上演するために主演の人物が記憶を毎回消されるという悲惨な状態。

襲いかかってくる追っ手は携帯のカメラを構えた見物人がさもいないように振る舞い、何かあるとぐるっと取り囲まれて写真を撮られるというヤバめの光景が見れます。

3話

モーションアクター兼声優がいる3Dアニメーション動物キャラのヴォルドーがネタで選挙に出たら大好評。中の人はプライベートでは政治家と付き合っていたが別れることになってしまったり、CIAがやってきてアニメキャラで各国世論のコントロールをしようと試みていたり。ネタでやっていたが事の重大さに気がついて辞めてみれば他の人がヴォルドーを引き継いで(音声は潤沢にサンプリングがあるのでおそらく合成だろう)素官品になる話。

ヴァーチャルネットなんとかとか、本人以外の何かしらのアバターを背負って政治発言する人、トランプのような振る舞いなど、色々比喩になっていて面白い。キャラクターとかアイコンに対して vote しちゃうのもありそうな話ですし。

4話

オチにたどり着くまで自分のコピーをパーソナルアシスタントとして働かせられるように調教する人とか色々話が出てくる。話のつなぎ方はなかなかで、一度直接見て欲しい。

面白かったのは頭にチップ埋め込まれている系の世界観なので、物理「ブロック」という概念があって、法執行機関によって「ブロック」されると、他人からはブロックされた人だというシルエットだけの表示になって見えるようになり、ブロックされた人は許可のある人間以外シルエットでしか見えないというのがとても怖かった。

これ学校で生徒同士でやられるといじめにつながるだろうなと思いました。「俺あの人にブロックされてるのか……」ってのが本人同士にしか分からない状態になるので。この設定で書かれる物語読んでみたい。

印象に残ったエピソード

3話『時のクマ・ヴォルドー』でしょうか。SNSでの話をリアルに持っていくとあんな感じかと。ヴァーチャルネットなんとか系が政治活動に進出してくるとより近い感じになるでしょうね。中の人問題当然出てくると思いますし。そしてアメリカでは漫画のキャラクターを彷彿させる人物が大統領になったりしてますし。

総評

S2は総合的な出来がよくてとてもおすすめです。全話見ると4時間近くかかりますが、その価値はあると思います。

漫画『クロスボーンガンダムDust』4巻


クロスボーンガンダム』シリーズは師弟の話から親子の話も広がり、『スター・ウォーズ』のようなサーガになりつつある。

4巻を読んでそう思った嬉しさに前の巻の記事書いたかどうかを気にせずに書き始めました。


クロスボーン・ガンダム』は初代から順に

と読者にとって既知の登場人物が師匠となり、初登場の主人公が弟子となって成長していく形式を取っていました。

Dustではそのパターンがいくつか崩れています。

  • フォントの冷凍睡眠によって師匠(フォント)-弟子(アッシュ)の年が逆転している
  • 恒例の師匠からの「黙って俺に付いて来るか、何もかもを忘れるか」の問いを弟子が断った

など。そして本巻から始まったカグヤの正体をめぐる新展開で登場した新キャラ。カグヤの一回り下の婚約者というクロスボーンガンダムタイプに乗った謎の男、誰なん……トビア!トビアじゃないか!(違います)

通信で顔をはっきり映す前にシルエットはあるものの、姿がはっきりしたコマで「ニコル・ドゥガチ」と名乗っていて、クロスボーンガンダムタイプのモビルスーツに乗っている。しかも姿はトビア。どう考えたってカーティス(トビア)とテテニス(ベルデナット)の息子さんですね。どうもありがとうございました。

機動戦士ガンダム』シリーズは数多く作られ、物語が作られている期間だけでも100年近くあるのに親子で主要人物を占める話はそれほど描写されていません。小説を含めても『ベルトーチカ・チルドレン』から『閃光のハサウェイ』のブライト/ハサウェイでしょうか。

しかし、優生遺伝論に近い発想だと思いますが、大事を乗り越えた主要人物の子供がどうなっていくかのは興味の対象です。「ニュータイプ」という人間の進化のような話をしていれば尚更のことです。妄想としてよくある展開がついに実現した!そういう胸にこみ上げるものがある展開でした。

(前作の主要人物の子供かつニュータイプ的というと同シリーズで『ファントム』におけるベルデナットもいるのですが、ベルデナットはモビルスーツ乗ってないし、囚われのお姫様ポジションだった時期もあったので個人的にそれほど盛り上がらなかったんですよね)


そのニコル「父親に似てない」「(カグヤは個人的にはタイプだが)政略結婚はよくない」「親の結婚と自分の出生時期が前後しているので、親の軟禁が自分のせいではないか」という悩みを抱えているようですが

  • 父親に似てない:父のトビアはカーティス・ロスコに整形してるので当然。その事実を知らされる前に親元離れたと思われる
  • 政略結婚はよくない:「子供が不幸になる」と言ってますが、少なくとも母方祖父母は政略結婚で生まれたのが母
  • 親の結婚と守勢時期:それ以前にベルデナットが生まれてる。そしておそらく同い年くらいの姉がいることを知らない

と今後も両親のことを知ってあれこれ思うことがあるでしょう。その時の師匠になるのが本作の主人公であるところのアッシュなのでしょうね。

本来本作で師匠となるはずだったフォントは別のところで弟子というか共謀者をとってますし、天下三分の計(違う)のそれぞれの陣営で師弟関係が生まれていくのでしょうか。


カグヤの方は16のニコルに対して28だし、趣味じゃないので当然結婚相手としては眼中にないですね。しかも地球に移民したムーン・ムーンの姫様で、という。『ZZ』からの登場ですね。『クロスボーン・ガンダム』シリーズには木製じいさんグレイ・ストーク(ジュドー・アーシタ)もとうじょうしてますし。ガンダムAでは『ムーンガンダム』も連載されていますし。『ZZ』関連が多く出てきますね。


ストーリーはカグヤの里帰り(ムーン・ムーンという名前だけど宇宙ではなく、地球の海底にあるのが面白い)にさいしてムーン・ムーンと木星のつながりが登場し、それぞれの代表としてカグヤとニコル、過去の遺産としてクロスボーンガンダムサイコガンダムが登場。

大気圏突入とサイコガンダムの起動〜戦闘が長めだったのでストーリーの進展は絞られていますが、カーティスとテテニスは木星タカ派に軟禁状態にされているという話も出ていましたし、これからの展開が楽しみです。

Netflix 『ブラック・ミラー』S1


評価

  • 5/5点 (何度か見直してる)

概要

『ブラック・ミラー』(原題:Black Mirror)は 動画配信サイト Netflix のオリジナル作品。社会風刺SF(イギリス制作だけあってジョークが黒め)。シーズン1は3話。

  • 1話『国家』:国民に人気の王女が誘拐され、首相は犯人からあることを要求される。犯人の主張はSNSをつかって拡散されていき、首相は犯人の理不尽な要求を受け入れざるを得なくなる
  • 2話『1500万メリット』:ディストピアSF。完全管理社会から脱出するにはオーディション番組に出演してスターになる道しかない
  • 3話『人生の軌道のすべて』:近未来、過去の記憶をすべて録画再生できるチップを体に埋め込んでいる世界。他人にも共有できる形で完全な記憶がある世界で起きる不幸とは

ポッドキャストを聞いて存在を知ったのですが、昔見た『新アウターリミッツ』の社会風刺エピソードとも通じるものを感じました。アメコミの『ウォッチメン』なんかも『アウターリミッツ』の「歪められた世界統一」を元ネタの一つにしていますし、イギリス感があります。

いずれも後味よくないエピソードなので、そういうのが受け入れられる気性・体調でない場合は視聴はお勧めしません。

各話感想

1話

王女を誘拐して要求が首相が豚とヤる様子のTV放映という、よく分からない要求をして来る犯人と閣僚たちの慌てふためきようがSNSを通して拡散されていき、収集がつかなくなってしまう。首相のもとに指が送られてきたりで追い詰められていく。

SNSで情報が収集できないほどに拡散されてしまうことや、悪趣味が通ってしまう恐ろしさがよく描かれていると思います。

2話

ディストピアSFで題材自体は割とある話で味付けが現代風になったかという感じ。管理社会脱出のためには体制側に取り込まれざるを得なくなり、体制側への不満は、同じような不満のはけ口にされるために飼われる形になってしまう。

完全管理社会の描写や娯楽などがフルデジタルではあるものの示唆含めた部分はそこまで新しい要素ないかなという印象です。ただ、押しが酷い目に遭うという分かりやすいシチュエーションではあるので辛さは割と強めです。

3話

これも発想としてはあったんじゃないかなという記憶のデータベース化と共有の話。共有のところがやや現代チックか。法規制はとうぜんあるものの、他人の記憶にアクセスできるというのが怖いところで、企業就職時や渡航時に怪しいことしてなかったかとかのチェックなど、物証になっちゃうし、プライベート見られちゃうんですよね。

そうでなくとも、主人公の男性もそうなのですが、嫌なことがあったときの記憶をなかなか忘れられないタイプの人には辛い世界だな、と思いました。

印象に残ったエピソード

1話『国家』でしょうか。理由はインターネットやSNSが社会生活内に取り込まれているからです。現代〜近未来くらいの時間軸の話でインターネットやSNS的なものが出ていない話はどうも古い感じがしてしまうので。あとはイギリス人らしい首相への直接要求がブラックだから。

総評

元々『新アウターリミッツ』のような寓意を含んだSF系の話が好きなので総合的に良かったです。他の作品で似たようなエピソードがあっても、現代的に作り込まれている点や、現代だからこそ状況が変わってきた点が含まれている話があるのでとてもよいと思っています。

Netflix 『食品業界に潜む腐敗』(原題:『ROTTEN』)

評価

  • 3.5/5点 (見直しはしないけどためになった)

概要

『食品業界に潜む腐敗』(原題:『ROTTEN』)は 動画配信サイト Netflix 制作のオリジナルドキュメンタリー作品。全6話。アメリカ食品業界における諸問題がテーマで、各話概要は以下

  • 1話『はちみつは甘くない』:蜂蜜の需要が急増するものの、混ぜ物をしたカサ増し品や安い輸入品に押され、ある時期になるとカリフォルニアに受粉の出稼ぎに出る。そこで起こる大量失踪・大量死・盗難などの問題の話
  • 2話『食物アレルギー』:あまり実態が分かっていない食品アレルギーの話。主に取り上げられているのはピーナッツアレルギーの話で、農家や調理店舗などがどう問題に対処しているかという話
  • 3話『仁義なきニンニク戦争』:料理番組で取り上げられて一大市場となったニンニク。ところが、海外輸入品に関税をかける団体がある企業だけ関税を免除しており、そこから発生した2件の訴訟によって実態が晒されていく話
  • 4話『真っ黒なチキン』:大企業に小作化された養鶏業者の実情と、養鶏業者内の競争からドロップアウトした業者による妨害工作の話
  • 5話『搾り取るのはミルクか金か』:牛乳の価格の下落により、生計が立てられない酪農家が続出。一方で儲かるが、安全性や健康面などでまだ議論の多い生乳の販売額は上がっていて、という話
  • 6話『もし海から魚が消えたら』:世界中で水産資源が減る中、水産資源保護のためにはじまった規制が金持ちに乱用されたり、出自のよく分からない輸入物など、漁業が直面している問題の話

日本とアメリカだと保護・規制の度合いがかなり異なると思いますが、勝ち目が薄い自由競争辛い。そしてだからと言ってみんな辞めて他のことしてよいのかというとそうでもないので、一定数やらないといけない場合の対策は何かしらしないとまずいなと思いました。

各話感想

1話

蜂蜜の需要が高くてもそうそう量産できないし、無理に増やそうとすると大量死するという無理目な状況設定から始まる。そうなるとある程度輸入に頼るわけだが、カサ増し用の混ぜ物をしてくるところがある。検査費用は業者の自己負担の上、混ぜ物も検査に検出されないようなものになっていくといういたちごっこ。

養蜂業者は収入をカリフォルニアの広大な敷地での受粉の出稼ぎで得ようとするが、大量失踪や盗難なども発生。加えてカリフォルニアへの移動中に蜂が死んでしまったり、全米からかなりの蜂が集まるので集団感染の問題も懸念される。

シロップ業者としてはある程度安価で質が担保できるものが海外輸入できる、養蜂業者としてはカリフォルニアの受粉業が今後も続く(確かこの話だとアーモンドの需要だったと思いますが)という前提で動いているものの、その前提が割と不安な感じで見ていてなんともいえない気分になりました。

2話

タイトルは食品アレルギーだが、主にピーナッツアレルギーの話。ピーナッツアレルギーはかなりメジャーな食物アレルギーで、カートゥーンのキャラクターでもピーナッツアレルギーのキャラがいるのを見かけます。

農家は啓蒙的な組合のようなものを作り、レストランは原価下げるためにアーモンドの代用品としてピーナッツ使ってピーナッツアレルギーの人に出してしまった話と、徹底的に食品アレルギーに気をつけて、食品アレルギーの人でも外食できるレストランを作ったシェフの話。

私は慢性的なアレルギー性鼻炎持ちで幼稚園の頃から定期的に通院してますが、それでも食品アレルギーの毎食気をつけないといけないのと、場合によっては代替手段がないのと、コストのかかり方に比べたら食品アレルギーの方が大変だなと思いました。

何かしらのアレルギー持ちの人が増えてきているので、アレルギーの緩和の方法の研究の話もありましたが、個人的にもここは進展あってほしいですね。

3話

中国業者の闇といった感じの話。関税免除のためにおそらく資金渡してるのと、関税かけられた中国企業がかけられてない企業に関税かけさせるために、アメリカ国内の業者に資金渡したり、刑務所の強制労働で加工させたりといった真っ黒な話。

実際、訴訟になっていて

  • 関税かけられた中国企業がかけられてない中国企業に関税かけさせるためにアメリカ国内業者に資金を渡すが、業者ともめて訴訟
  • 関税かけられてない中国企業の加工ニンニクが安価なのは刑務所の強制労働によるもの。アメリカは強制労働によって作られたものを輸入しない法律があるので、そこに合うかの訴訟

の2件の訴訟を軸に話が進む。

前者は撒き餌になった業者は金や資材をもらったが、餌につられた業者は金ももらえず、訴訟リスクを負った上に他の中国業者の片棒かつがされたことで辛い目に遭う、弁護士と撒き餌の業者はひたすらシラを切るという詐欺じみた話。餌につられた業者はかわいそうではあるものの、都合の良すぎる話だと思わなかったのかと思う面もありました。ただ、かなり生活に困っていたようなので仕方ないのかという感じも。

後者は中国系のアメリカ業者が、非関税の低単価ニンニクを販売する中国業者の加工現場に潜入。現地の人にインタビューしたり、刑務所内の強制労働の様子を盗撮して、裁判所に提出したものの、証拠として認められず、中国への立ち入りもおそらく禁止になった話。盗撮が証拠として採用されないのは裁判所の判断としてはそうかもしれないけれど、関税かける手段もなく、刑務所強制労働ほどの価格破壊に対抗する手段もなく、追い詰められてやった感じがあり、見ていてとても辛かった。

関税かける団体が国(といっても職員が賄賂受け取って便宜図らないとは限らないけど)ないしは公平性を保てる組織が担当してないのがこの件の最大の問題。なんでも民営化して市場原理に任せればいいってもんでもないでしょう感はありました。

4話

養鶏業が個人では立ち行かなくなって、大企業が設備(ヒヨコの孵化、鶏の加工、養鶏用など)やヒヨコを持ち、ヒヨコから鶏に育てる過程を複数の養鶏業者に委託するという形式になった話。

ヒヨコの餌代や上手く育たなかった場合のリスクは養鶏業者持ちで、企業は複数の養鶏業者を抱えているので早く出荷基準に達するように業者同士を競争させる。最上位にはなけなしの褒賞、下位にはペナルティが課せられる。制度に耐えられずにドロップアウトした元養鶏業者は企業の設備や構造が同じ鶏舎に破壊行為を行って復讐をする。

作物や畜産物は外部リスク高いけど日用品なので安価に流通させないといけない問題が出た結果しわ寄せが最末端に来るという、カール・マルクスが『資本論』書きたくなるのも分かる構成。景気良くなって賃金が全体的に上がったとしても値段上げると買えない人が出て来るだろうし。原材料としている加工品や外食産業にも影響出るでしょうしね。

私の田舎の同族経営の養鶏所が高齢化と諸々立ち行かなくなって、遠方の養鶏所を複数経営している業者に経営委託するようになったのが数年前にあったのですが、買いに行っても卵が常にあるとは限らない(売れ残りが出ないようにしてる)加工品の販売がメイン(単価高めの商品を扱う)などに変わっていました。

お金がないと選択肢が狭まるなぁ、という気持ちになりました。

5話

ライフスタイルの変化で牛乳の消費量が激減したというところから話が始まるのですが、言われてみると学校給食以降自発的に牛乳そのものを飲むことはほとんどなくなった気がします。加工品(チーズ、ヨーグルトなど)は食べるのですが。

需要がなくなれば小規模なところはやっていけないわけで、生乳が健康志向ブームなどで価格がつくが、それはそれで問題が、という話。単純に絞ったままでいいわけではなく、加熱などによる殺菌をしていないため、衛生状態や、時間経過で問題起こりそうですもんね。

6話

水産資源保護のための制度が金持ちに悪用されたり、出所の分からない輸入品や闇水揚げ量の増大に寄与してしまったという話。漁師対役所(+学者)で基準値の論争になったり、大きい枠で考えた時の対策が問題を引き起こすパターンでした。

売買できる形で漁業権を決めると、養鶏場の話と同じように、金持ちが漁業権を買い占めて、船を持った船長が小作化するという現象が起こったり、規定量や規定区画を超えた闇水揚げが発生したり。

この辺どうしたもんかというところですね。人類の歴史上取り尽くして枯渇した動物なり海産物も割とあるわけですし。根本的には人類が増えすぎているのが問題なのかもしれません。

印象に残ったエピソード

3話『仁義なきニンニク戦争』でしょうか。利益上げるために国レベルの組織が他の国にとって非合法な手段が取れるのヤバすぎる。弱者はルールを守らないといけないが、強者はルールを変えることができるという、弱い方だったら即座にドロップしたいと思います。しかも市場が円熟してから乗り込んで来るので、設備投資の回収とかどうするんだって話になっちゃうんですよね。

総評

大規模化しないと立ち行かなくなっている業界で、末端にいる人たちがどういう目に遭っているかという話だったと思います。資本主義辛い。

後、輸入品が絡むところは大体競争相手であり、問題行為をしていると言われるのは中国。1話の蜂蜜では検査方法で検出しにくい水増しの方法をいち早く開発している話。3話のニンニクではニンニクの加工作業を刑務所の受刑者に低賃金・長時間労働をさせることで価格を下げていたり、ライバル会社に関税適応させるためにアメリカ国内の業者に金を渡して署名を書かせたり。実際には中国だけではないと思いますが、同じルールで動いてない強大な団体がいるのどう折り合っていけるのでしょうか。

日本でも食品をはじめとして安価な製品は中国をはじめとした海外製品に頼っていますが、それなりに経済成長したはずの国から安価に物が買える代償が何かということですね。実家は完全保護商材の米農家でしたが、自由化していたら第三種兼業農家だったので稲作やめてたろうなと思いました。

Netflix 『スター・トレック:ディスカバリー』S1


評価

  • 4/5点 (面白かった)

概要

TVドラマ『スター・トレック』(邦題『宇宙大作戦』)以前の話。TVオリジナルシリーズとタイムラインはつながっているが、オリジナルシリーズと関連がありそうな部分は

  • 主人公のマイケル・バーナムの養父がスポックの父・サレク (スポックはサレクの記憶の中で名前だけ出てくる)
  • クリンゴンの司令官コルがコール司令官と同族
  • ハリー・マッドが出てくる
  • 最終回でU.S.S. エンタープライズが登場し、パイク艦長(パイロット版の艦長)から通信がある

くらい。オリジナルシリーズだと一目でわかる制服も、今作では紺1色の現代風の制服ですし、基本他シリーズの予備知識なくて問題ない作りになっていると思います。


内容としては

  • クリンゴン帝国の復活
  • 胞子ドライブの謎と実用化
  • 並行世界への旅
  • 停戦

といった流れ。最終回でU.S.S. エンタープライズが登場したのでシーズン1で完結かもしれませんが、次シーズンあるなら見たいです。

印象に残ったエピソード

2話「連星系の戦い」

いきなり船壊滅・主人公が裁判の上反逆罪で終わるのが印象的。「クリンゴンの習性を考えたら先制攻撃だ」という人間の常識的にはちょっと理解しがたいバルカン的合理性の要素は『スター・トレック』的だなと思いました。

3話冒頭でも他の服役者と共に移動していて「どう『スター・トレック』に戻すんだ」と思う展開でした。

7話「正気を狂気に変えるマジック」

イムループ脱出話。話の出来というよりはこの手の話が好きだからという理由ですが。スタメッツの態度がぐっと軟化していったのがこのあたりのエピソードからだったと思います。オチも懸賞金をかけている嫁さんの実家に引き渡すというコメディチックな感じで暗めの話が多い中では清涼剤的な感じがありました。

12話「大それた野心」

元の世界ではバーナムと共にクリンゴン艦に乗り込んでトゥクヴマを倒すさいに死んでしまったジョージャウが並行世界の絶対君主(だと分かったのは11話ラストの通信ですが)で、光に弱かったり、残虐な武具を部屋に溜め込んでるなどよく分からない部分があったロルカが並行世界の住人だと分かったりした話。並行世界の話に入ったときは胞子ドライブの暴走の要素以上に引っ張るなと思っていたのですが、なるほどという感じでした。

ただ、並行世界の話に関してはロルカの反逆がどうなったかが分からないまま元の世界に戻ってしまったのと、並行世界のジョージャウを元の世界に連れてきてしまったのでこの辺りにどう結論づけるかは次シリーズ以降に持ち込み。

総評

1シーズン完結だとするとちょっと要素多いかなと思いましたが、向こうのドラマの作りとして「人気が一定以上出れば次シリーズ」なのでさもありなんという感じです。

順当に作られた現代アップデート版という感じでよかったです。

Netflix 『汚れた真実』(原題:Dirty Money)


評価

  • 3.5/5点 (見直しはしないけどためになった)

概要

『汚れた真実』(原題:Dirty Money)は 動画配信サイト Netflix 制作のオリジナルドキュメンタリー作品。全6話。

  • 1話『排ガス不正』:ドイツの大手自動車会社フォルクスワーゲン社をはじめとした「クリーンディーゼル」エンジンの排ガス検出量検査の不正の話
  • 2話『ペイデイローン』:日本で言うところの消費者金融がアメリカ先住民部族の補償制度をはじめとした制度悪用をして巨万の富を築いた話
  • 3話『製薬会社の疑惑』:カナダの大手製薬会社バリアン社の粉飾決済の話
  • 4話『カルテルと銀行の癒着』:イギリス資本の大手銀行の上海香港銀行が麻薬カルテル資金洗浄を幇助していた話
  • 5話『メープルシロップ盗難事件』:カナダでメープルシロップが大量に盗まれた事件をきっかけに組合の利権と闇市場があらわになってきた話
  • 6話『ペテン師』:第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプの大統領以前の経歴について、取引をしていた記者や元同僚からのインタビューをまとめた話

1〜4話は自動車製造業、金融業、製薬業とマスメディアだと大口顧客になる業界で深追いしづらい話。5話は他の国ではともかくカナダでは厳しいでしょう。6話は踏み込み方が浅ければ FOX 以外では放送できると思いますが、かなり踏み込んでいるのでアメリカでは厳しいかもしれません。

そういうことで、私の理解としては「マスメディア(今回に限ればTV)が伝えにくい話題を深掘りするドキュメンタリー」といったところです。日本だと制作費出ないだろうし、書籍で出てるイメージです。

なお、上記にはインターネットビジネスは出てきません。Netflix は試用期間を除いて月定額のサブスクリプションモデルで広告も出してませんし、インターネットで問題にされがちな事項はさほど出てこないのであまり問題ないのかもしれませんが。あえて言うならシステム構築に Amazon Web Service を利用しているので Amazon の話と、動画関連の業種(映像制作・配給・販売など)に関してはあまり不都合なことが言いにくいかもしれません。もっとも、この辺りは逆に既存メディアが書くところなのでそちらで読めば良いかと思います。

各話感想

1-4話

1-4話は資本主義社会で「とにかく稼げ」とプレッシャーをかけられて倫理感を失っていくと酷いことになるという話。

不正が明るみになりそうになっても、スポンサーシップを盾にプレッシャーをかけて告発を握りつぶしたり、訴訟になれば原告側の資金が尽きるまでひたすらに引き伸ばしを図る。更にドキュメンタリー公開時に訴訟が続いているものは当然「俺は何も悪いことはしていない」と答えたインタビューが挿入されている。

皆、人に本人が直接何かしらの害を与えて金を稼ぐのを拒否はするだろうけど「自分の目の届かないところで」「直接被害者が見えないように」だとやってしまうものだと改めて思い知らされた。裁判の証拠として提出されていると思われるメールや、会話の録音、文章が流れる度に心が底冷えする思いがしました。

5-6話

5-6話はある特定の業種や人にしかできない抜け道や不正の話。

5話はメープルシロップのことをあまり知らなかったのだが、管理・保存・取り扱い、重さなどをトータルで考えると石油や金に匹敵するケースもあるとのこと。ただし、世界の生産量の大半がカナダのケベック州で占められていて、現地では組合がいて価格調整をしている。となるとメープルシロップを手に入れたとしても流通先に困るのだが、大規模盗難団はメープルシロップ農家を抱き込んでルートを確保していた。抜け道考えて不正する人はどこにでもいるもんですね。

6話はアメリカ合衆国ドナルド・トランプについて。他の話が組織や団体の話なので、登場する人に同情の余地がある場合が多かったのですが、彼の場合は個人なのでややキツく感じました。以下はこのドキュメンタリーで初めて知りました。

  • ゴシップ記者に「とにかく『大金持ち』と書いてくれれば積極的に書いて欲しい」と言ってた
  • 早いうちから不動産ディベロッパーは辞めていた
  • 古くから付き合いがある人は「リッチー・リッチ(漫画の金持ち少年キャラクター)」のままだと思ってるとのこと
  • カジノ事業で作った借金は親が掛け金で払った
  • TV番組『アプレンティス』でトランプのオフィスロケにしたかったが、ボロボロだったので全部セットで作った。結果若い世代に富豪のイメージがついた
  • 不動産事業で「トランプ・○○」というのはネーミングだけ貸していて、実際の事業には関与していない
  • 色々あったせいで怪しいお友達としか取引してないことが多く、そこをつついた司法機関の人を大統領権限でクビにしてる

以前ヒストリーチャンネルで見た『ドナルド・トランプとは何者だ!?』

と概要は被っていたのですが、『ドナルド・トランプとは何者だ!?』の方がよほどマイルドでした。

特にTV番組『アプレンティス』によって若い世代に富豪のイメージがついたというエピソードは目から鱗でした。あの番組が始まる前まではマクドナルドのCMに出てたりもしたんですね。

印象に残ったエピソード

6話『ペテン師』でしょうか。事実にせよ「公人ともなると大変だな」という同情心は芽生えるくらいキツい内容(サブタイトルからして「ペテン師」ですし)で、それ以上に酷いことしてるもんだとも思いました。これでも大統領になれるというのが、民主主義の実験場たるアメリカ合衆国なんですかね。関係者に言わせるとオルタナティブ・ファクトな内容なのでしょうけど。

総評

冒頭にも書いたようにマスメディアだとスポンサーシップを気にして言いにくい内容を取り上げているという印象がありました。それはそれでインターネットというオルタナティブ・メディアの役割を果たしているとして、今後、ますます人が情報を得る手段がインターネットに偏っていく中で、インターネット事業者の中立性がどのように現れて、ドキュメンタリー番組自体の意見として現れてくるのかはまだ見えないなという感じです。

既存メディア側でインターネットの問題に対するドキュメンタリー作る体力なくなると、かつてのマスメディアと裏返しの関係なるだけなので(日本だとNHKが時々ドキュメンタリーやりますが)個人としてどう情報集めて考える基準にしていくのか考えなければなぁ、というところです。

後、組織ぐるみで不正を始めてるケースを聞くにつけ、無茶な目標設定されてない限り、景気があんまり良くないんだなと21世紀的な辛さにただただ打ちひしがれる感じがします。